この「ペアリング」とは、料理の一皿、一皿にあらかじめソムリエがベストマッチだと考える酒を組み合わせる(ペアリングする)ことを指す。つまり、アミューズからデザートまで計5皿のコースだとしたら、最初のスパークリングから最後のデザートワインや食後酒まで5杯がすべてあらかじめプログラムされている状態だ。
数年前はワインだけがペアリングされていたが、現在ではフランス料理店であっても料理によってカクテルを組み合わせたり、酒が飲めない人向けにノンアルコール・ペアリングを提案するなど、そのバリエーションは年々豊かになっている。
その一例ともいえるのが、今年7月にオープンしたばかりのモダン・ヴェトナミ-ズ「アン ディ」だ。銀座の老舗「レカン」で長らくシェフ・ソムリエを務めた大越基裕さんが、フレンチではなく、ベトナム料理という変化球を投げたとあって、オープン直後からかなり話題となっている。
そして、この店の売りのひとつが「ペアリング」。アジア料理の中でも辛くないベトナム料理は、実はあっさり系の和食と似ているということから、いくつかの料理には日本酒がペアリングされてくるのも面白い。早くも予約が取れない人気店となっている。
[左]ハーブたっぷりのチキンの生春巻き(ココナッツサワーのソース)は発泡の日本酒と。
[右]人気メニュー、アジアンスパイスの効きた豚の炭火焼は南アフリカの赤ワインとともに(画像はともにAn Diより)。
この飲食業界における「ペアリング」はいまでは拡大解釈され、「組み合わせ」や「相性」のようにも使われている。つまり、数年前の「マリアージュ」のようなイメージだ。
「このペアリングはなかなかおもしろいね」「この料理とペアリングさせるなら、どんなワインがいいですか?」などの用例とともに覚えていただきたい、食のトレンドキーワードである。
An Đi(アン ディ)
東京都渋谷区神宮前3-42-12 1F | 03-6447-5447
営業時間:12:00~13:30(L.O. / 土・日曜のみ)、18:00~23:00(L.O.)、月曜休
コースメニュー 5900円、ドリンクペアリング 4900円(共に税込・サ別)、アラカルトでの対応も可。