「そこまで悪くない」
とうもろこしの房除去を延々と続けているわけでもなく、ビクトリア朝時代のワークハウス(救貧院)で骨を折って働いているわけでも、労働者を搾取する工場でファストファッション用の服を縫っているわけでもないのに、自分はいったい何を愚痴っているのか──。
確かに、自分より下の状況を少し考えることは良いことだ。だが職場での不幸は他と比較するものではない。離職しないことを正当化するために、もっと悪い環境がある、と自分に言い聞かせるのはやめるべきだ。
確かにもっと劣悪な環境は存在するが、今よりずっと良い環境もあることは、あなたも心の奥底では分かっているはずだ。
「これだけの権力を他ではもう持てない」
今の職場にはひどい悪影響(例えば健康問題や、自尊心の低下、人間関係の悪化。ホワイトハウスの場合は世間の笑いものになるという問題もある)があるにもかかわらず、自分のエゴが邪魔をして辞められないこともある。もう少しでトップに立てる。99%のホワイトカラー層が決して持てないような権力や特権が自分にはある。もちろん嫌なこともあるけれど、完璧な仕事なんてない──。
自分の尊厳と引き換えに、高い給与や、立派な履歴書に書き込める職歴を得ることを正当化するようになってしまえば、かなり危険な状態だ。あなたが手にしている権力は幻だということに気付かなくてはいけない。それは実際は自分のものではなく、その気になればいつでもあなたから権力を奪い取れる誰かから借りているだけなのだ。