FCAの株価は過去12か月で114 .37%、過去24か月で60.61%の上昇を記録した。一方、テスラの株価はそれぞれの期間でみた場合、63.21%、38.15%の値上がりとなった。
テスラなどのEVメーカーがいずれ伝統的な自動車メーカーに取って代わると考えていたEVのファンたちや、テスラ株に高い期待を寄せているウォール街の関係者たちにとっては、驚きの結果かもしれない。
FCAは、規模の経済と範囲の経済の利点をいずれも十分に生かすことができていると見られる。同社は老舗の大企業であり、売上高は1320億ドル(約14兆3900億円)に迫る。傘下にはマセラティ、アルファ ロメオ、クライスラー、ダッジ、フィアット、フィアット・プロフェッショナル、ジープ、ランチアなど多数の有名モデル・ブランドを擁する。
一方、テスラは売上高が100億ドル程度にとどまる小規模の新興企業だ。生産するのはセダンとSUVのみ。
「規模」でも「範囲」でもより大きな利点を持つFCAは、コストの面でもテスラより優位に立っている。これは、両社の利益率の違いにも表れている。8日28日の時点でYahoo!ファイナンスに掲載されていた両社の利益率は、FCAが2.5%、テスラが-7.6%だった。
テスラがEV市場をマスマーケットに変え、さらにその市場で優位性を維持していくという見通しについては、事業戦略の専門家らの間で懐疑的な見方も浮上している。
ハーバード・ビジネス・レビュー誌に掲載された記事は、テスラはウォール街が考えていたほど革新的な企業ではなかったかもしれないと指摘している。
「米国で2014年に販売された新車およそ1650万台のうち、電気自動車の台数は11万9710台。割合は0.007%程度に過ぎない」
明らかに、電気自動車の市場は小さいということだ。記事はさらに、次の点を指摘している。
「老舗の自動車メーカーがEVにほとんど注意を向けていないのは、彼らが分かっていないからではない。EVを求める消費者がほとんどいないからだ。(ただ、これらの自動車メーカーがEVを完全に無視しているわけではない。日産・リーフとシボレー・ボルトの販売台数は2014年、いずれもテスラを上回った)」
「テスラは今後、消費者の好みが変わり、何百万もの人がEVを欲しがるようになる可能性に賭けている」
消費者の好みは今後、実際にはどのように変化するのか──。先のことは、誰にも分からない。