ライフスタイル

2017.09.10 12:00

予期せぬ登場のマセラティ・レヴァンテ、SUVの牙城に食い込む


フラッグシップ・モデルは、424hpを発生するフェラーリ製ツインターボ、3リッターのV6仕様のレヴァンテSだ。日本ではこの仕様が70%のシェアを保持。ZF製8速オートマチック・トランスミッションで全輪にトルクが配分される。

レヴァンテは、いかなる状況でも充分なパワーを与えられており、スタートから時速100kmへの加速はわずか5秒。スポーツモードに入れると、ギアシフトもスロットル反応、さらにステアリングも速やかになり、サスペンションが固めになる。万が一、運転しているのがマセラティであることを忘れたとしても、4500回転まで踏み込めばV6の唸りが思い出させてくれるだろう。

インテリアはアウディQ7ほどのハイテック感はないものの、さすがに本革、ウッドベニアとダッシュボードに配された楕円形の時計が、マセラティの存在感をたたえる。8.4インチのディスプレーを持つインフォテイメント・システムはスッキリしていて、操作しやすい。BMW iドライブのような機能性はないが、レヴァンテのほうが使いやすい。



ところで、インテリアのハイライトは、なんと言ってもハンドルの裏に潜む美しいパドルだ。完璧に鋳型されたなめらかなアルミニウムのパドルは、工芸品と呼べるものだ。このギアを触りたいがために、誰でも間違いなくマニュアルモードで運転することになるだろう。

濃いめの茶系モカ革とツヤ消しウッドのトリムは、落ち着いてシックだが、センターコンソールに配されたクライスラー製のスイッチ類とノブは、1200万円のSUVには相応しくないかもしれない。ギアノブはプラスティックっぽく、狙ったギアも多少入りにくいときもある。

そうは言っても、こんな小さな弱点はまったく問題ではなさそうだ。その証拠に、中国で1万2000台超、アメリカでは8000台がすでに販売されている。また、同社の第4市場である日本でも、2016年には485台のレヴァンテが販売された。この数字は、マセラティ・ブランドの総販売数のほぼ半分にあたる。つまり、このSUVは大成功であり、その理由も明白だ。

フェラーリ製エンジンと、類いまれに優れたAWDシステム、すばらしい操舵性、そしてマセラティ独特の吠えるようなエギゾースト音がそろったレヴァンテは、SUVというセグメントでもはっきりと目立つ存在で注目度は高い。もしちょっと残念なステッチ類やギアノブに目をつぶれるなら、このイタリアの勇猛なSUVでライバルを圧倒できる。それにあのパドルシフト! あの感触は、快感でなくてなんだと言おうか。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事