グランドセイコーの多様性が意外な効果を生む

photographs by Kazuya Aoki illustration by Adam Cruft

編集者であり、著作家でもある松永真理さんは、現在、複数の社外取締役を務めるとても強力なビジネスウーマンである。そんな松永さんが着用する腕時計は、王道かつ意外なモデルだった。


リクルートにて雑誌編集者でキャリアをスタートさせた松永真理さんは、『就職ジャーナル』編集長、『とらばーゆ』編集長を歴任。その後、NTTドコモにおいて“iモード”の開発に携わる(iモードの名付け親でもある)など、いわゆるキャリアウーマンの先駆者的存在である。

現在も個人事務所を設立し、ビジネスの世界で活躍する松永さんがビジネススーツに合わせてきた時計は、「グランドセイコー」であった。「グランドセイコー」となれば、誰もが納得。ビジネスウォッチとしての王道だ、と思うのだが、松永さんが選択したのは、ベゼルにダイヤモンドがセッティングされたモデルだった。

「最初はダイヤモンドが入っているので、ビジネスには華やかすぎるかな、と思ったのですが、実際に着けてみると、全然そんなことなかったです。品よくまとまっているので、安心しますね」

仕事が一区切りしたときに、時計を購入することが多いという松永さんと「グランドセイコー」の出合いは、約2年前。企業の社外取締役に相次いで就任したことがきっかけだった。

「グランドセイコーは、もちろん以前から知っていましたが、次の時計を探していた際に、あらためていろいろとモデルを紹介してもらったのです。そこで眼に留まったのが、このモデルでした」

2年ほど前といえば、ちょうど女性モデルを強化し、モデル数を増やした年だった。松永さんのモデルも、その時期にラインナップされたものである。

「この時計を着けて海外に行くと、あらためて日本のブランドを持っていくのはお洒落だなと感じました。トップインタビューをすると、日本企業のトップの人たちも、日本ブランドを意識しているのを感じます」

腕時計は、実際に使用してみると思いがけないよさに気付くことがある。松永さんにとって、この「グランドセイコー」は、品のいいデザインであること、日本ブランドであることに加え、“時間の感覚を変えてくれる”という効用もあった。

「私はiモードで7倍速の世界にいたものですから、ITを離れるときから時間に追われるのをやめたいという意識が働いているのかもしれません。この時計は文字盤の白蝶貝がとても落ち着くのですよ。時計を見るときは、待ち合わせに遅れてはいけないとか、電車や飛行機に間に合うかなとか、追われてる感覚があったのですが、この文字盤を見ると、不思議と慌てている自分を抑えようという気になるのです」

とてもいいビジネスパートナーとなっているようである。

松永真理◎1954年生。77年日本リクルートセンター(現リクルート)入社。「就職ジャーナル」「とらばーゆ」編集長を歴任。97年NTT移動通信網(現NTTドコモ)入社。「iモード」の名付け親となる。フォーチュン「モースト・パワフル・ウーマン」アジア1位等受賞歴多数。
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text by Ryoji Fukutome

この記事は 「Forbes JAPAN No.38 2017年9月号(2017/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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