ベーシックインカム、ノーベル経済学者も支持する理由は

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「ベーシックインカム(最低所得保障)」がますます高い支持を得るようになりつつある。5年前には、間違いなく非主流派の限られた人たちが持つ考えだったが、それがいまや政治的立場を超えた多くの人たちの間で、高い関心を集めるようになっている。

テクノロジーが従来の雇用モデルに対して及ぼす影響を懸念するシリコンバレーの起業家たちは、ベーシックインカムに関するパイロット試験に資金を提供し、研究プロジェクトに寄付している。一層複雑化し、負担が増大する一方で効率的ではない生活保護制度の一部をベーシックインカムに置き換える可能性について、評価を実施している国もある。

ベーシックインカムへの支持はさらに、ノーベル経済学賞と呼ばれる「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞」の受賞者らの間でも高まっている。今年6月にドイツ・リンダウで開催されたリンダウ・ノーベル賞受賞者会議では、参加したエコノミストたちがこれについて意見を交換した。

経済学者でノーベル賞受賞者のクリス・ピサリデス卿は公開討論会で、グローバル化のほか、ロボットや人工知能(AI)の登場によって生じる不平等の解決策になるとして、ベーシックインカムの導入を提唱した。技術を必要とする仕事を含め、多くの雇用が危険にさらされていると警告するとともに、自動化がもたらす社会的・政治的な問題には、技術の進歩を妨げることのない政策対応が必要だと指摘している。

「ベーシックインカムは、生活の基本的ニーズに対応するための簡単な方法だ。(最低レベルの生活を保障すれば、)医療保険や教育などの社会サービスは市場を通じて提供することができるだろう」

「国は社会サービスを提供する労働者への給与を補助したり、失業者を妥当な賃金でこれらサービスに従事する者として直接雇用したりすることもできるだろう。政府が国民に公共サービスを提供するよりも、国民を信頼し、国民それぞれに、何にどのようにお金を使うかを自分で決めてもらうのだ」

市場を通じて医療や教育といったサービスを提供するという考え方には、全ての人が同意するわけではないだろう。だが、国民の基本的なニーズを満たすために十分なお金を提供し、それぞれのお金の使い方は自ら決めてもらうというのは、ベーシックインカムの基本的な考え方だ。

労働経済学者のピーター・ダイアモンドも、ベーシックインカムを提唱している。ピサリデス卿とともに2010年にノーベル経済学賞を受賞したダイアモンド教授は、米国内の所得と富の不平等について、特に子供の貧困の深刻化や社会的移動の欠如について懸念を強めている。
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編集=木内涼子

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