国際標準の確立をめざす米独
ZEWのミッテルシュタントへの意識調査の中で「規格が決まっていないためにIoTの技術を導入できない」という回答がある。この点についても、ドイツ政府と経済界は着々と布石を打っている。PI4の第1作業部会は、IoTの国際標準、規格の問題に取り組んでいる。
また、16年3月2日、PI4と米IoT推進団体「インダストリアル・インターネット・コンソーシアム(IIC)」は、スイスで開いた会議の後、「スマート工場のための参照アーキテクチャなど、IoT基礎技術の開発で提携する」ことで合意した。
さらに両国は「IoTの標準化と国際規格の確立へ向けて協力する」と宣言。この合意により、IoTにおける相互運用性を達成する上で重要な一歩を記したのだ。
PCにおけるウィンドウズの例を見ても明らかなように、国際標準や規格を制する者は世界全体の市場を制する。今、各国の間では、国際標準をめぐる激しい駆け引きが行われている。気がついたら米独がIoTに関する国際標準を確立してしまい、日本は蚊帳の外という事態は避けるべきだ。
日本経済の宝であるモノづくり業界、特に中小企業の競争力を守るためにも、日本政府・産業界はIoTについての情報収集を強化し、国際社会で我が国の主張・提案をこれまで以上に積極的に発信してほしい。
熊谷 徹◎ドイツ在住ジャーナリスト。1959年、東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてミュンヘン市に在住。『日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ』(洋泉社刊)など著書多数。『ドイツは過去とどう向き合ってきたか』(高文研刊)で2007年度平和・協同ジャーナリズム奨励賞受賞。