放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


実は日本のキャンピングカー市場は年々盛り上がりを見せている。「キャンピングカーショー2017」は前年よりも1万人以上多い約7万5000人が来場と大盛況で、国内の総所有台数も10年前と比べて2倍近くまで増加。所有しないまでもレンタルする人が増えており、今年は日本の「レンタルキャンピングカー元年」になるかもしれないという活況さだ。

キャンピンクカーといえば、ベッドはもちろん、シャワー、トイレ、キッチン、電源を完備した大型車で、オートキャンプ場に行き、BBQをやって泊まるというのが主たるイメージだろう。

僕が考えているのは、もっと気軽なもの。亡くなった妻の「故郷の海に散骨してほしい」という遺言を叶えるため、夫が自分で内装したワンボックスカーで一人旅を始めるという、高倉健さんの遺作『あなたへ』という映画があるが、このワンボックスカーが体現した“動くリビング”が、今回の企画のイメージだ。

運転しづらいキャンピングカーではなく、運転しやすい普通の乗用車を改装して旅をする。これは、新しい体験を求める旅行者と、観光資源はあるのにインフラが整っていない地方をつなげる大きな可能性を秘めている、と確信した。

そこで僕は、最初の舞台を故郷・天草に定め、ルノーの箱バンKANGOOを1台購入し、キャンピングカーに改装した(専門で行っている会社があるのです)。

車体は天草の海をイメージしたブルーで、パッと見はノーマルなKANGOOだが、天井部分のポップアップルーフを開ければ、より開放的な空間に早変わり。メッシュウィンドウで装備されたルーフテント部分は通気性がよく、蚊帳のなかのごとくよく眠れる(ベッドのマットレスはエアウィーヴを思案中!)。後部座席はもうひとつのベッドになったり、テーブルと椅子になったりする。収納部分には調理器具や食器などキャンプ用品が一揃いしまってある。大人ふたりと子どもひとりくらいなら、快適に旅が楽しめるだろう。

この天草専用バケーションカーを、年明けから天草空港で貸し出す予定でいる。天草らしい景色や体験をセレクトしたオリジナルルートもいくつか提案する。車のトランクから見る“バケーションビューポイント”は、インスタ映えもするし、家族だけの絶景の宿泊施設になるかもしれない。ただ、いきなり知らない場所や普通の駐車場に車を停めて寝るのはさすがに怖いので、車版民泊として個人や行政の未活用地を利用させていただこうと思い、いま関係各所に交渉中だ。

例えば、ある港町に「海月(くらげ)」という鮨屋があるのだが、車は店舗前空き地スペースに停め、日中は漁船でマリア像を見に行き(連載第19回参照)、食事やトイレは海月で、お風呂は近くの温泉で、というコースメニューもひとつ考えている。

「ななつ星in九州」の陸上版を

この旅の醍醐味は、車そのものが“パスポート”になるところ。いま、天草ブルーのKANGOOで行くと地元の人が快く迎えてくれる、というアライアンスをつくっていて、例えば農家では採れたての野菜、港では獲れたての魚を食べられるとか、陶芸教室の体験ができるとか、軒先を気軽に貸してもらえるようなことになればと思っている。

2013年、JR九州が運行を開始したクルーズトレイン「ななつ星in九州」の登場で、九州の自然観光やレストラン、温泉は軒並み活性化した。その陸上版をやってみたい。人が車でいろんなところを旅することにより、経済が復活していくということを見届けたいのである。

ちなみにKANGOOのキャンピングカーは購入とインテリアの改装含め約600万円。これくらいなら失敗しても痛くないし、可能性のある投資だと思う。地方自治体の皆さんも、まずは一台からいかがですか?

有意義なお金の使い方を妄想する連載「小山薫堂の妄想浪費」
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文 = 小山薫堂

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