ビジネス

2017.09.07 15:00

「地上10メートル以内」の生産現場を快適に、オムロンの工場改革


そうした「人と機械が融和する工場」を実現するために、同社は近年、産業用ロボットやセンサーの会社を次々買収している。今年7月には国内の産業用カメラメーカーで高い技術力を持つセンテック(神奈川県海老名市)を傘下に収め、さらに今後の4年間で、M&Aに1000億〜2000億円を投じる方針を決定した。

いま世界中のモノづくりの現場で深刻な問題となっているのが「人材の不足」だ。中国をはじめアジア各国の人件費が高騰するなか、どの企業も工場で働く技術者の確保に頭を悩ませている。オムロンはその解決策として、AIとIoTによって人間と融和したマシンが熟練工に代わって高度な作業を行う未来を志向する。

その取り組みのモデルとするのが、自社のオムロン草津工場だ。先のNJシリーズの主力生産拠点である同工場では、15年に買収したアメリカの産業用ロボットメーカー、アデプトテクノロジーと共同開発したロボットが、人間に交ざって通路を行き来し、使用済みの部品パネルを回収する。ロボットにはセンサーが組み込まれ、人が前にいれば立ち止まって回避し、電池残量が少なくなると、勝手に充電エリアに行って充電を行う。

草津工場には毎日のように日本全国のメーカーの工場長や技術者が見学に訪れ、自社のFA化について相談していくという。

「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」というのはオムロン創業者の立石一真の理念だが、AIとIoTがロボットと結びつくことで、その目標は現実となりつつある。

「いま人間が行っている単純作業をロボットがするようになれば、人間はよりクリエイティブな仕事ができるようになるはずです」と、横田。

草津工場の工場長は自分たちが将来目指したい工場の姿として、「スポーツジムに通うような感覚で工場に来て、健康になって帰っていくような生産現場を実現したい」と話しているという。

文=大越 裕 写真=益永研司

この記事は 「Forbes JAPAN No.38 2017年9月号(2017/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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