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2017.09.06

「香り」はコミュニケーション、日欧で取り入れ方が異なる理由

George Rudy / shutterstock.com


「もの」でとらえると深みのない香りになるのだ。日本では、窓際に干した洗濯物の柔軟剤が香りが隣の家まで飛んでくるのが苦情になり「香害(こうがい)」なんて単語が新聞に載ってしまう。これは、「こと」の部分が足りていないわかりやすい事例だ。社交と香りで思いつくのは唯一「香道」である。そう考えると昔の日本人のほうが香りをコミュニケーションにうまく使っていたかもしれない。

体臭と混ぜ合わせる香水は、自分だけのためではなく「常に相手がいる」という社会が意識されたコミュニケーション手段である。だから、香水メーカーも女性の体臭とあわさってその女性がより官能的で本能的に誘惑される存在にする香水をつくるのだ。フランスらしいような気もする。

文化や気候など、香水の売れる・売れないには様々な要因はあるだろうが、コミュニケーションという視点で見れば、社交性が高い民族のほうが売れるだろうし、社交性の高い都市部やそういう世層がいいというのは想像がつく。日本は社交性を高めないと閉塞的な社会になるので、もしかしたらこれから香水市場が伸びるのではないか。香水株があれば買いどきかもしれない。

最後に最新のアメリカ香料メーカーの話をしたい。以前、パーフューマーという職種の専門家からある宇宙光線銃のような不思議な機械を見せてもらった。これは香りを狙って採取する機械で、香りの内容成分を特殊分析器で分析し、化学式に変換されて未来の香料のヒントにするという。

この人の仕事は、毎日テレビや雑誌を見て、新しい香りを採集しに行くこと。僕が会ったときはオーストラリアの砂漠から帰ってきたばかりで、珍しいサボテンがはじめて花をつけたニュースをテレビで見て、花ではなくその匂いを採集してきたという。

香りハンターなんて洒落た肩書きだと、それこそコミュニケーションにはうってつけである。もちろん、同社のこの人も、フランス人だった。

文=朝吹 大

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