エヌビディアは時価総額11兆円に
エヌビディアの時価総額がこの1年で3倍に上昇し、1000億ドル(約11兆円)近くに達した今、AIチップ領域には莫大な資金が注がれている。Wave Computing とGraphcoreの2社はそれぞれ6000万ドルを調達した。GraphcoreにはディープマインドCEOのDemis Hassabisやウーバーの主任研究員のZoubin Ghahramani、イーロン・マスクが支援するオープンAIのメンバーらも出資者として参加している。
中国のAIスタートアップ企業「Cambricon」も先日、中国の政府系ファンドが主導するシリーズAで1億ドルを調達したばかりだ。
しかし、資金調達が加熱する一方でこの分野には多くの課題がある。チップの製造には数年の期間を要し、現状のプロダクトはどれもまだ試作品の段階だ。どの企業が勝ち抜くかを見抜くのは非常に難しい。
また、これらの新興企業がどの程度の市場規模を獲得できるかも不確定だ。AIチップメーカーの最大の顧客となるのはデータセンターだが、この分野は米国ではアマゾンやアップル、フェイスブックやグーグル、マイクロソフト、中国ではバイドゥ、アリババ、テンセントが握っている。
グーグルは既に独自のAIチップであるTPU(Tensor Processing Unit)を開発しており、マイクロソフトはFPGA(field-programmable gate array)と呼ばれるチップの採用を進めている。
クアルコムは5兆円でオランダ企業を買収
また、この領域では統合化の流れも起きている。インテルはプログラム可能なチップメーカーのAlteraを167億ドルで買収し、自動運転支援のMobileyeを150億ドルで傘下に収めた。さらにインテルはAIスタートアップのNervanaを4億ドルで買収している。
一方、クアルコムは自動運転分野で躍進が期待されるオランダの半導体メーカー「NXPセミコンダクターズ」を470億ドル(約4兆9300億円)で買収し、EU当局の承認を待っている段階だ。
クアルコム傘下のベンチャーキャピタル、クアルコムベンチャーのQuinn Liは市場の見通しを次のように述べる。
「我が社もセレブラスのようなAI特化型チップメーカーの動向には関心を持っている。しかし、この分野で最大の顧客となりうるデータセンター市場には不確定要素が多く、現状では出資を行っていない。見込まれる顧客数は限定的であり、エヌビディアが覇権を握る市場への参入は困難だ」
現状では市場の動向を探っている段階だ、とLiは言う。「グーグルは既に自社で独自のAIチップの開発を進めており、自社開発のメリットを感じている。アマゾンやマイクロソフトは、もしかしたらセレブラスに関心を持つかもしれないが、我が社としてはまだこの分野の市場規模を見極めている段階だ」