ファーウェイ、世界初の「AI内蔵チップ」発表 新スマホに搭載

ファーウェイ コンシューマー・ビジネス・グループのリチャード・ユーCEO(2017年1月に開催されたCESにて、Getty Images)

ファーウェイは9月2日、ベルリンで開催の国際見本市IFAで、AI機能を統合した新型プロセッサ「Kirin 970」を発表した。同社のコンシューマー・ビジネス・グループCEOのリチャード・ユーは「Kirin 970は世界初のニューラルプロセッサユニット(NPU)内蔵型のチップで、世界最速のモバイルモデムである」と述べた。

Kirin 970は人工知能(AI)領域に新たな前進をもたらすデバイスだ。現状の全てのスマートフォンは、AIの活用をクラウドやインターネット接続を通して行っているが、Kirin 970はチップ内部でAI処理を行える。Kirin 970はファーウェイが間もなく発表する、新型スマートフォン「Mate 10」に搭載される。

当日のキーノートでユーは、Mate 10の前面が完全なベゼルレス仕様になることをほのめかし、正式発表は10月16日のドイツ、ミュンヘンのイベントで行われると述べた。プレゼンでユーはMate 10を用いて撮影された2枚の写真をスクリーンに表示した。

その1枚は空中にジャンプした少女の写真、もう1枚は上海の景色を撮影したものだった。2枚の写真はそれぞれ、比較対象としてサムスンのGalaxy S8で撮影した写真と並べて表示された。Kirin 970のNPUは2つのISP(イメージプロセッサ)を稼働させ、従来よりも高画質な画像を撮影できる。

ファーウェイは先週、オーストラリアの公式ツイッターアカウントで「Mate 10のカメラ性能はGalaxyを超えた」と宣言していた。

Kirin 970は親指の爪ほどのスペースに55億個のトランジスタを格納しており、トランジスタの個数ではSnapdragon 835を25億個上回っている。ユーによると新型モデルのMate 10では、撮影データの処理が端末内部でリアルタイムで行われるため、カメラ性能が飛躍的に向上するという。「撮影対象が猫なのか、花なのかを端末がその場で認識し、最適な画像処理をデバイスが行う」とユーは述べた。

世間の多くの人はAIを、SF映画で描かれる“完璧な知性”のように考えがちだ。明るさや背景をAIが認識する“スマートなカメラ”は、さほどの進歩とは見なされないのかもしれない。しかし、テクノロジーに詳しい人ならば、これが革命的進歩であることは理解できるだろう。

Kirin 970の登場は、単に美しい写真を撮る以上のイノベーションを未来にもたらす。ユーはその例として次のように述べた。「クラウドに依存するAIの欠点は、処理に遅延が生じることだ。ミリ秒単位の遅延は、洗濯機を動かす上では問題ではない。しかし、自動運転車をAIで稼働させる場合、わずかな遅延が生死を分けることになる」

ユーによると、Kirin 970へのNPUの搭載は巨大なブレークスルーにつながるという。「NPUは自らが主体となって思考し、最適なユーザー体験をもたらす。一方で、グーグルアシスタントのようなAIアシスタントは受け身で動作することしかできない」とユーは述べた。

Kirin 970はAI機能以外でも、様々な面で革新的なチップと言える。ファーウェイはそもそも、テレコミュニケーション分野の巨大企業として知られるが、Kirin 970は通信モデム分野の最先端を切りひらくチップといえる。

間もなく登場するMate 10は、下り最大1.2GbpsのLTE DL Category 18に対応した初のモバイル端末となる。通信速度はKirin 960搭載のMate 9やP10の約2倍に達する。

Kirin 970はまた、デュアルSIMにも対応し香港や欧州の一部の国では非常に便利な機能を実現することになる。従来の標準的なCPUに比べ、50倍も効率的な処理が行えるため、バッテリー寿命も飛躍的に伸びる。

筆者は2016年のファーウェイの「Mate 9 Pro」を高く評価しており、Mate 10の登場に関しても非常に大きな期待を寄せている。

編集=上田裕資

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