外国人が驚く日本人の意外な一面に、“勝ち筋”はある。ボストンコンサルティングの御立尚資は、今年、来日した外国人たちとの会議で何度となくこう言われた。
「なぜ日本の社会にはロボットやIoTにアレルギーがないのか?」
欧米では「機械が人の仕事を奪う」脅威論が、日本人の想像以上に激しいという。
「日本は超人手不足だから、ロボットやオートメーションはニーズがあるのでしょう」と、御立は言う。「ロボの手も借りたい」と言いたくなるほど、日本は世界最速で少子高齢化が進み、現役世代の割合が減少しているのは周知の通り。フォーブス ジャパン9月号の特集「日本発コネクテッド・インダストリーズ」で紹介した事例もそうした現場からアイデアが生まれた。工事現場、宅配、農業、工場……。
人口問題の打開策がないまま、どん詰まりに陥る。が、それは反転のチャンスでもある。視点を変えるか、誰かの助けを借りるしかなく、インテルの伝説的CEO、アンドルー・グローヴも自分の経験から過去のしがらみを捨てるチャンスとして、こう言っている。
“生死を賭けた土壇場になってはじめて目の前の現実が、長年信奉してきた信条を打ち破るに至った”
つまり、コネクテッド・インダストリーズによる「大どんでん返しモデル」が生まれるのは自然の流れであり、すでにその土壌は整っているのだ。
もう一つ、ロボットアレルギーがない理由として、御立は「鉄腕アトムの刷り込みでしょうかね」と笑う。
日本人の大半は、ロボットは人を助けるものだと信じて疑わない。子どものころから毎週ロボットが人間と一緒になって社会悪をやっつけるアニメを見て育ち、ドラえもんに至っては対等な「友だち」で、仕事を奪うどころか仲良く遊んだり、人間の家に住んで一緒に食卓を囲んだりしている。こんなに仲良くロボットと共生する社会を描いてきた国は他にあるだろうか?
日本と西洋の間には、「自然を征服するか共生するか」の違いがあるように、「ロボット観」も異なる。子どものころから刷り込まれた日本人のロボット観が、今になって産業界をアシストしようとは手塚治虫や藤子不二雄も予想すらしなかっただろう。
オープンとクローズをどう分けるか
ときに「モノマネ」と揶揄されてきたビジネスも優位性となる。前出の御立は、「アメリカで生まれたトランジスタをラジオにしたのは日本だし、ウィリアム・エドワーズ・デミング博士の品質管理をカイゼンとして広めたのも日本であるように、コンセプトは借り物でも真っ先に応用してきた歴史がある」と言う。