ビジネス

2017.09.02

西洋と異なるロボット観、「ドラえもんの国」日本の勝ち筋とは

日本人は子どものころから、ドラえもんは「友だち」であるアニメを見て育ってきた─。


資源に乏しいうえ、「もったいない」という生活思想が創意工夫の文化を生み、応用は日本のお家芸となった。世界で価格競争をやれば日本は負けることが確実である。世界で勝負するには応用しかない。ポイントは、応用のノウハウをどうやって勝ち筋にするか、である。

農業や介護などがわかりやすい前例になる。おいしい作物を育てるコツや、こまやかな気づきのサービスといったノウハウを持ちながら、持続的に稼ぐことができず、新規参入者よりも廃業や離職率の高さばかりが目立つ。慶應義塾大学准教授で内閣官房 情報通信技術総合戦略室室長代理の神成淳司は、「ノウハウの証券化」を提案する。

「おいしいトマトを作るには適度なストレスを与え、水を与えるタイミングが重要ですし、介護、ホテル、レストランなどのヒューマンサービスの究極は、状況を把握した的確なサービス提供です。こうした数値化が難しい熟練のノウハウを継承できるように、人工知能を用いたデータマイニングなどの最新技術を活用しています。高度なノウハウをブラックボックス化すれば、ビジネスが成り立ちます」

暗黙知とAIの組み合わせだけではない。業界の壁を取り払って、視野を広げてみれば、世間は立ち位置が違う人たちばかりだ。視点の数だけアイデアの数があり、視野の広さがそのまま可能性の範囲を広げる。

「CO2排出抑制などの環境、あるいは安全といった分野は各企業が競う領域ではなく、ビッグデータを使って知見を共有してもいいはず」と、ワークスアプリケーションズCEOの牧野正幸は言う。

企業間の無駄な競争が経済成長を推し進めてきた面もあるが、そうしたモデルでの成長はすでに限界がきている。競争と協調をどこで分けていくべきか。オープン(協調)とクローズ(競争)を決める判断力が企業の明暗を分けることになるだろう。

コネクテッド・インダストリーズで問われるのは、まさに経営者の力量なのである。

文=藤吉雅春

この記事は 「Forbes JAPAN No.38 2017年9月号(2017/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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