ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディア「ALIS」のICOプロジェクトが始まるのだ。日本国内のICOとしては過去最大規模の、世界に向けたプロジェクトとなる。
ICO(Initial Coin Offering)といえば、Mozilla前CEOが設立したBraveが30秒で3500万ドル調達したことで話題になったが、IPOなど株式を用いた資金調達とは異なり、仮想通貨の売却を通じて資金調達を行う新たなファイナンス手法として注目を集めている。
なぜ、ブロックチェーン技術を活用したソーシャルメディアを立ち上げようと思ったのか、資金調達の手段として、なぜICOを選択したのか、その背景にあるストーリーをALISの代表である安 昌浩氏に聞いた。
ブロックチェーン技術を使って、日本のメディアをアップデートしたい
「テクノロジーの力で、人類の進歩に貢献したい」
そう考えていた安氏が、AIやVR・ARなど、様々なテクノロジーが注目を集める中で、ひときわ可能性を感じたのが「ブロックチェーン技術」だった。
ブロックチェーン技術は日本語では「分散型台帳技術」と訳され、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨を支える基盤技術として有名だが、この技術を活用すれば医療や不動産、著作権管理などあらゆる産業をアップデートする可能性を秘めている。かつて、インターネット技術が世界中の産業構造を大きく変えたように。
安 昌浩氏:ALIS ファウンダー
安氏:昨年から、一部のWebメディアが「行き過ぎたSEO対策」と「徹底したコスト削減」により、信頼性の低い記事を量産していることが問題になりました。スマホ・ソーシャル時代において、Webメディアを信用できない、というのは大問題です。実際、僕ら自身が仮想通貨やブロックチェーン技術に興味を持ったときに、日本のメディアの情報があまりにも質が低くて愕然としました。
もちろん、そうした粗製乱造を良しとして、デマ情報や役に立たないコンテンツを配信するメディアの責任ばかりが追求されがちです。しかしながら、Webメディアの広告収益を産むためのモノサシが記事の質ではなく量を評価する「PV数」であり続ける限り、「記事の質ではなくコストを賭けずに量(PV)を最大化する」という構造になってしまうのだと考えています。
つまり、「もっと質の高い情報が流通する世の中にしたい」という思いを形にするには、記事コンテンツの質を適切に評価をする「新たなモノサシ」が必要なのですが、新たなモノサシをつくるコア技術としてブロックチェーン技術が有力なのではないか、と考えたのです──
毎日、世界中のブロックチェーン関連サービスを片っ端から使い倒す日々を送る中で、ひときわ心を掴んだのが、Steemというブロックチェーンベースのソーシャルメディアだ。
Steemのユーザーは、質の高い記事コンテンツをSteemに投稿し、他のユーザーからUpvote(いいね)が得られると報酬がもらえる仕組み。Steem上で信頼度の高いユーザーからたくさんいいねされるほど、多くの報酬がもらえるようになっている。
水澤 貴氏:ALIS Co-Founder / Marketing
どのくらいたくさんの人に読まれたか(量)ではなく、どのくらいたくさんの人にいいねされたか(質)によって記事コンテンツの価値が決まる。さらに、すべての人のいいねを同列に扱うのではなく、その分野の専門家など、信頼度や影響力が高い人のいいねほど高値がつくため、コンテンツの書き手側には「専門家にも認めてもらえるような記事コンテンツをしっかり書こう」というインセンティブが働くようになるのだ。