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2015.02.01 23:50

モハメド・エラリアンと考える 「金融政策と世界経済」

国際通貨基金やパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(ピムコ)などの名だたる金融機関や企業で要職に就いてきたモハメド・エラリアン(56)。「ニュー・ノーマル」や「T字路」といった
新しい概念でリーマン・ショック後の世界経
済を説明してきた彼は、2015年以降の世界
をどのように見ているのだろうか? 直接聞く
ため、米西海岸はニューポートビーチへ飛んだ。

国際通貨基金やパシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー(ピムコ)などの名だたる金融機関や企業で要職に就いてきたモハメド・エラリアン(56)。「ニュー・ノーマル」や「T字路」といった
新しい概念でリーマン・ショック後の世界経
済を説明してきた彼は、2015年以降の世界
をどのように見ているのだろうか? 直接聞く
ため、米西海岸はニューポートビーチへ飛んだ。



「多速度的世界」を理解する者がニュー・ノーマル後を生き残る
金融危機後、世界経済は、非伝統的な金融政策がとられる予測不能な次元に入った。いま、投資家が知るべきこととは? 世界屈指のエコノミストに、その答えを求めた。

※以下、本誌掲載インタビュー記事より抜粋

2015年の世界を脅かす3つのリスク

高野:15年の世界経済におけるリスクを3つ挙げるとしたら?


エラリアン:第1のリスクとしては、市場に関する政策面の失敗が挙げられます。政策面については議論していますが、市場はもっと単純なもの。なぜなら、中央銀行の措置によって、金融市場の時価評価はファンダメンタルズ(経済の基礎的指標)よりも高いからです。中央銀行が楔になっているのです。しかし、リスクが顕在化することがありま す。13年5月や14年9月と10月の株価下落に見られたように、ファンダメンタルズによって正当化されなければ、市場が高い時価評価を支えきれなくなるリスクがあります。

高野:それでは2番目のリスクは何でしょう?

エラリアン:2番目のリスクは、地政学です。世界にはいま、3つの明確な地政学上の脅威が存在します。まず、「冷戦」の復活であり、これはウクライナ問題に見てとれます。確かに、キューバ危機ほどではないかもしれません。しかし、 仮にエネルギーや金融関連の制裁が発動されれば、ロシアは深刻な不況に追いやられます。対抗措置としてロシアがヨーロッパにエネルギーの供給を断てば、今度はヨーロッパが不況に陥るでしょう。そうなると、いきなりグローバル経済の2つの重要な地域が問題を抱えることになるのです。次に、「非国家主体」の台頭です。従来、地政学的な紛争は国家間のもので、少なくとも国家間の交渉が可能でした。いまでは、 非国家主体の影響が大きくなっています。その最たる例がイスラム国(ISIS)ですが、香港で起こっている民主化運動も非国家主体が中心的な役割をしています。そして、政治制度がそれらに追いつけていません。最後が、脆弱な国家、あるいは失敗国家の脅威です。(中略)第2のリスクは、これら3つの特殊な要素にもとづく地政学です。

高野:3番目のリスクとは何でしょうか?

エラリアン:3番目は、まさに社会問題に関するものです。とりわけ、低成長を受け入れる覚悟が社会にあるかどうか、という点ですね。例えば、ギリシャをはじめとした南欧諸国などが試されています。

高野:そのギリシャの動向が懸念されています。1月25日に行われる総選挙を前に、ユーロ離脱論が国内で再燃しているとのことです。

エラリアン:ギリシャの根本的な問題は、高い経済成長と雇用を生み出す方法を見つけられていないことにあります。にもかかわらず、緊縮財政と社会的な負担を強いられることに有権者は不満を抱いているのです。そして、不満の矛先はドイツをはじめとした諸外国に向かっています。
仮に、ギリシャがユーロ離脱という道を選んだとしても、多くの難局が待ち受けるでしょう。窮地を抜け出すには、痛みを伴う改革が不可避です。ただ、問題が波及しないように対策が進められてきたので、ユーロ圏へのダメージは、問題が生じた10〜12年ほど深刻なものにはならないと思います。これは、中国にとっても似たような問題です。国の規模を考えれば、6〜7%という成長率で、中国社会が安定的でいられるかはわかりません。(以下略、)

高野 真(本誌編集長)

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