しかし、アリババの前途には難題もある。中国の小売市場は小さな事業者が乱立状態にあり、数百もの小売チェーンがひしめき合っている。それらの事業者の全てにアリババのシステムを導入させるのは非常に難しく、独自のEコマースシステムを持つチェーンも多い。
「アリババに全てを握られるのは御免だと考える業者も多い」と関係者の一人は筆者に述べた。「アリババが描く“新しい小売業”というのはコンセプトに過ぎない。誰もまだその具体化を達成していないのだ」
コスト高に直面するアリババ
一方で上海本拠の調査企業86 Researchは「Hemaのチェーンは運営コストが高く、さほどの利益を生んでいない」と指摘する。北京や上海の一等地で4000平方メートル以上の店舗を運営するHemaは、配送事業の拡大のために人員を増強しようとしているが、そのコストは莫大だ。ベイン・アンド・カンパニーのアナリストは「Hemaは北京では黒字化を果たせないだろう」と述べた。
「小売業ビジネスはその地域特有の状況に左右される。地域のビジネススケールや人口密度を把握した上で、物流ネットワークに投資しないと利益は得られない。Hemaは北京で数店舗を運営しているが、商品あたりの提供コストが高すぎる」と同社のアナリストは述べた。
しかし、オンラインとオフラインの統合こそが、中国の小売業の未来であることは確かだ。その2つは互いに補完しあう関係にある。
86 Researchのアナリストは筆者の取材にこう述べた。「アリババのHemaでの試みは失敗に終わる可能性もある。しかし、リアル店舗は今後オンライン事業者と組んでデジタル化を進めるしかないのが現実だ。小売業者らはその状況を理解し、新たなインフラの構築を進めている」