車椅子、杖、立たないモヒカン ─パンクフェス21年目の「精神」

今年で41年目のパンクロックフェス、レベリオンフェスティバルの様子


パンクスたちは自分たちの場所を自分たちで確保して大事にしている。会場の雰囲気は驚くほどマナーがいい。ケンカなど粗暴な振る舞いも見てないし、杖や車椅子のパンクスには率先して手を貸す姿も珍しくなかった。でも、そこはパンクスである彼らだ。行儀がいいたけでは終わらない。

「5年前に元セックスピストルズのジョンライドンがPILで出演した時、会場は超満員になりました。でも、演奏が始まると観客席からバターが大量に投げ込まれたんです(笑)」

かつてのパンクのアイコンはこの頃、バラエティ番組で人気になり、バターのテレビCMにも出演していた。観客と演者の立場は対等で、誰であっても決して神格化しないのだ。

今年、会場で目立ったのが、反トランプのTシャツやステッカーだった。実はこうした政治的アティトュードはこのフェスの精神でもある。

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「いろんなことを受け入れる、本当に雰囲気がいい場所なんですが、今年はあるバンドが過去に出していたゲイを揶揄する歌が問題になって出演取りやめになりかけました。レイシストと認定されたバンドは絶対に排除されるのです。そのバンドのTシャツを着ているファンさえダメだと注意されます」

パンクの矜持としてファシズムとレイシズムは絶対に許さないということか。商業主義から見放されたパンクスたちが自分たちで始めたフェスはパンク40周年の昨年、最大の参加者だった。今年は少し少なめとはいえ、のべ2万人を越えたという。また来年、その先のパンク誕生50周年に向けて彼らは始動している。

肉体は衰えど、精神は40年前と変わらず。かつての反逆児たちのスピリットが、とても健全に見えるのは、いかに世間が寛容さをなくしてしまったということかもしれない。

文・写真=小川善照

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