「リーダーシップ10000」と題した調査報告書を発表したのは、ロンドンを拠点とするグリーン・パーク(Green Park)。調査では、英トップ企業の最高経営責任者(CEO)、最高財務責任者(CFO)、会長を含む上位20職と、FTSE100企業のそれに次ぐ上級職100ポジションを務めるリーダーを、多様性の観点から分析した。
その結果、FTSE100企業のリーダーシップ・パイプライン(リーダー育成プロセス)では、白人以外の割合が5%にまで改善したことが判明。しかしこの割合が改善したのは4年前の調査開始から初めてのことであり、役員会は「英社会を公正に反映していない」と同社は指摘している。英国では2051年までに、黒人やアジア系を含む人種マイノリティー(少数派)の割合が20%まで増加する見通しだ。
前述の政府支援による独立調査報告書をまとめた英資源大手アングロ・アメリカンのジョン・パーカー会長は、経営者・投資家向けネットメディア「ボード・アジェンダ(Board Agenda)」にて私が行ったインタビューで、同報告書が「英国内に限らず、身の回りの人種構成比の変化に関心を向ける」きっかけになることを願っていると話した。
パーカーは、世界の人口増加の半分がアフリカ5か国、アジア3か国を含む9か国で起きると予測されていることや、英企業の海外売上比率はFTSE100企業で75%、FTSE250企業でも50%に上ることを指摘した。
顧客基盤に合わせるだけでも、こうした事実を考慮し、人種多様性のニーズを認識することが必要となる、とパーカー。「採用対象の人材プールは変化している。FTSE100・250企業の経営陣は役員の後継者選びの際、この現状を考慮しなければならない」
グリーン・パークの報告書によると、FTSE100企業で会長・CEO・CFOのトップ3職での人種的マイノリティーの数は前年から18%減少。英企業上位1万職全体では多様化が進みつつあるものの、進歩がみられる業界は限られており、通信・医療・銀行・金融部門で人種的マイノリティー人材とその昇進が増加していた。
上場企業の役員が英メディアによって「ペール、メール、ステール(白く、男性で、古臭い)」と呼ばれてから約10年。非常に古い表現に聞こえるが、現在のFTSE100企業役員会もそれに劣らず時代遅れで、目的にそぐわない状態にあるというのは、非常に危険な状況だ。