逆張り投資家として知られるマーク・ファーバーは先ごろ、米国の金融研究の専門家らで組織するハード・アセッツ・アライアンスのインタビューに対し、「米国民にとっての最大の地政学的リスクは従来型の戦争ではなく、米国の電力システムを崩壊させ得るサイバー攻撃だ」と述べた。
そうした状況において、金はかけがえのない「流通貨幣」となる。だが、金を持つべき理由はそれだけではない。
投資に関するニューズレター「マーク・ファーバー博士の月刊マーケット・レポート(Gloom, Boom & Doom)」の発行人で編集者でもあるファーバーは、第二次世界大戦直後のスイスで育った。厳しい時代の体験から、ファーバーと家族は紙幣に対する不信感を深めていった。そして、同時にファーバーは、セーフティネットとしての貴金属の重要性を認識するようになったという。
ファーバーは、父親が裕福な「百万長者」について話していたことを明確に記憶している。だが、「50年代から70年代にかけてそれ(100万)は大金だったものの、現在では大した金額ではない」と語る。
また、「インフレが起きていない」ことを話題にする人は多いが、それは「ナンセンスだ。資産と比べ、現金は大幅に購買力を失っている」と指摘している。
20年以上にわたりウォールストリートで働き、後に投資家に転身したファーバーのポートフォリオは主に、債券と株式、不動産からなる。「銀行に貯金をするだけでなく、それぞれに関連性のない多様な形の資産を保有しておくべきだと気付いた」のは1990年代のことだった。そして毎月、現物の金を買い始めたという。
「明かり」が消えればビットコインも消える
ファーバーは戦争が起きる可能性について、中国や米国が侵略されることはないだろうと見ている。さらに、われわれが脆弱性を持つのは「戦車を使わない戦争」だと指摘する。
「例えばニューヨークで停電を起こし、インターネットを遮断できる勢力との戦いだ。インターネットが使えなくなったらどうなるだろうか?」
そして、金塊の価値が明らかになるのはこうしたときだという。「このようなときには誰もが、通貨代わりとして認識され得る物理的な何かを手に入れたいと考えるからだ」。
ただ、ファーバーによれば、米連邦準備制度(FED)が金融緩和政策を取るとき、最大の恩恵を受けるのは米人口の0.01%を占めるにすぎない超エリートたち、一般的な米国人が苦しむ一方で資産を増やしてきた人たちだ。
「米国人の50%は、資産を保有していない…貨幣の増発による恩恵を受けていない。実際にはむしろ、消費者物価(CPI)が示す以上に生活コストが上昇していることで痛手を受けている」
ファーバーはこのほか、「世界的な景気回復は非常に弱い」と見ている。急速に増加している未積立年金債務は、新たに財政破綻する国が現れかねない明確な脅威だという。
「株式、金、そして債券に一定のポジションを持つことで、(ポートフォリオを)多様化をすることになる」「(そうすれば、)隣人が全ての資産を失ったとしてもあなたの損失は、例えば50%程度で済むかもしれない」