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ブドウ一粒に込められた思い~グローバル・ワイン講座

カレラのピノ・ノワール(左)とダックホーンのメルロー ナパヴァレー(右)

2017年8月16日に発表された、ダックホーン・ワイン・カンパニー(Duckhorn)によるカレラ・ワイン・カンパニー(Calera)の買収は、ワイン業界を驚かせた。カレラは、仏ブルゴーニュの名門ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)で修業したジョシュ・ジェンセンによって1975年に設立され、カリフォルニアワインの黎明期から、ピノ・ノワールの先駆者として名を馳せてきた。日本にもファンが多いブランドだ。しかし、ジェンセン氏の3人の子どもは、いずれもワイナリーを継ぐ意思がなかったという。

近年、アメリカのワイン業界では、M&Aの動きが加速している。 あるM&Aアドバイザーによると、ワイン関連のM&Aには3種類のバイヤーがいるという。一つ目は、ライフスタイル・バイヤー。カリフォルニアのワイン産地に近いシリコンバレーで成功した起業家が、ワイナリーのオーナーになる話に象徴されるように、ワイン好きが高じてワイナリーを買うケースである。次に、戦略的バイヤーと呼ばれる、同業者による買収。そして、プライベート・エクイティ(PE)ファンドなど、投資ファンドによる買収だ。 

特に、ワイン・飲料の大手や中堅企業が、戦略的バイヤ―として、ワイン関連企業やブドウ畑といった資産を買収する案件が目立っている。  たとえばE.&J.ガロ社やコンステレーション・ブランズ社といった大手企業は、多くのワインブランドを傘下に持っている。前者は、今も家族経営の未公開企業で、後者は上場企業。コンステレーション社のポートフォリオは、オーパスワンやロバートモンダヴィといったナパの老舗から、ニュージーランドのキム・クロフォードなど世界中に展開している。 

E.&J.ガロ社は、 2017年3月、ナパ・ヴァレーのステージコーチ畑の買収を発表した。わたしも訪れたことがあるが、ナパの東側の山腹にあり、600エーカーにもわたる広さを誇る。収穫されたブドウは、ケイマス、モンテレーナなど90余りの名だたるワイナリーとのあいだで高値で取引されている、銘醸畑だ。

コンステレーション社も買収の動きが盛んだ。2015年にメイオミワイナリーを3億1500万ドル(約346億円)で、2016年にはプリズナー・ワインを2億8500万ドル(約314億円)で買収した。 

こういったM&Aの背景の一つとしては、大手飲料会社にとって、知名度があり、生産量を増やす余地があるブランドを買収するメリットが大きいことがあげられる。買収後に生産量を増やし、すでに確立している広範な販路へ流すことで、売り上げを増やせるからだ。事実、コンステレーション社の2016年の年次報告書によれば、上述のメイオミは売り上げ+54%、プリズナーは+37%という高成長率が示されている。 

また、アメリカのチェーン店のワイン売り場をよく見てみると、特売コーナーに並ぶワインがすべて同じオーナー傘下のブランドだったりする。有力ブランドを多く持つ大手飲料会社は、力の強い小売チェーンに対しても、バーゲニング・パワーを発揮しているようだ。 

近年はワインのみならず、アルコール飲料の「Premiumization」が注目されている。消費者が、より品質の高いワインを求めるようになり、購買単価が上昇しているのだ。最近のワインブランドのM&Aも、相対的に高い価格帯のブランドに集中している。コンステレーション社の投資家向けの資料でも、「プレミアムブランド」への注力が掲げられており、実際に同社が買収したメイオミやプリズナーは、小売価格約20ドル以上の価格帯に分類される。

近年のアメリカの低金利と資金の余剰も、こういったM&Aを後押ししているのだろう。 

買収される側の理由も様々だ。次々と新規事業者が参入するワイン業界は、競争が激しい。資金繰りが苦しくなったり、成長が行き詰まったりすることは珍しくない。オーナーのキャッシュ化ニーズや、先述のカレラのような後継者問題も考えられる。 

一方で、カレラを買収したダックホーンは、TSGコンシューマーパートナーズの傘下にある。2007年に、創業者からGIパートナーズに売却され、2016年に、同ファンドからTSGに売却された。GIパートナーズはシリコンバレーを拠点としたPEファンド、TSGは一般消費財セクターに特化したPEファンドだ。投資ファンドによるM&A案件である。 

アメリカの金融アナリストやリサーチ機関の見立てによると、こういったM&Aの動きはこの先も続くとのことだ。ワインブランドが、大手企業やファンドの傘下に入ることで、これまでにはない成長戦略を追求できるであろう。一方で、一消費者としては、キャッシュフローや数値重視のプレッシャーから、創業者が築き上げた独自性やこだわりが、長期的には、維持されないかもしれないという懸念を抱いてしまう。

 

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