数年前に国際会計事務所KPMGが発表した報告書では、英国の主要クラスターは経済が栄える南西部に集中している事実が判明した。こうした一極集中状態の緩和に取り組む地域の一つに、マン島がある。
アイルランド海に浮かぶ人口8万5千人のマン島は、従来からの金融分野での成功と、最近のインターネット賭博分野での成功を基盤に、多くのハイテク産業クラスターの開発と島経済の多様化を試みている。
テック系エコシステムの構築
マン島政府の経済開発局は昨年、5千万ポンド(約70億円)を投じる企業開発計画を立ち上げたほか、地元企業に計450万ポンド(約6億3000万円)以上を投資した。この取り組みの注力分野は次の通りだ。
・通信
地元通信企業のマンクス・テレコム(Manx Telecom)は2016年、新技術の開発を支援するインキュベーター(起業支援事業)のバニン・ベンチャーズ(Vannin Ventures)を設立。同社幹部らに先日話を聞いたところ、マン島のコミュニティーは比較的小規模で独立しており、新たな手法や技術を試すのに完璧なのだという。
・メディア
アイル・オブ・メディア(Isle of Media)は、島の放送・デジタルメディア経済支援のため設立された官民協働事業だ。マン島に拠点を構えるメディア企業は、政府支援のメディア資金を活用できる。また、島ではメディアベンチャーのためのクラウドファンディング(ネットを通じた小口資金調達)プラットフォーム構築を進めている。
・医療技術
マン島ではマンクス・バイオメッド・クラスター(Manx BioMed Cluster)を通し、新興バイオ技術産業の拡大を試みている。
同クラスターには現在、機器メーカーをはじめ、コンプライアンス(法令順守)やデータ収集を扱う企業など、さまざまな業種の11社が所属。4年前に形成されてから、前年比で約13%の成長を達成してきた。