iPodの誕生以前から様々なメーカーがMP3プレイヤーを世に送り出してはいたが、iPodこそが時代を象徴するプロダクトと呼べる。しかし、それから15年以上が経過した今、iPodの時代は終焉を迎えつつある。
iPodが時代遅れの製品になった背景には、スマートフォンの普及がある。米国のシンクタンク、ピュー研究所によると現在アメリカ人の77%がスマホを所持している。スマホの普及は多くの製品に壊滅的打撃を与えたが、最大の被害を受けたデバイスの一つがMP3プレイヤーだった。
今ではかつてのiPodとさほど変わらないサイズのスマホが、音楽を聞く上での主要なデバイスになった。ストリーミングサービスの普及もこの流れを後押しした。
iPodの時代の終わりはもうそこまで来ている。アップルは7月28日、iPod nanoとiPod shuffleを製品ラインナップから外すとアナウンスした。これでiPod touchをのぞき、音楽プレイヤーとしてのiPodは姿を消すことになる。iPod touchの販売は継続されるが、さほど長い命とは思えない。
5ギガで399ドルもしたiPod初号機
iPodの価格は初期の製品と比較すると、劇的に低下している。iPodの現行モデルは32ギガバイトが199ドル、128ギガバイトが299ドルで売られている。iPodの初期のモデルの容量はわずか5ギガバイト(1000曲に相当する容量)だったが、価格は399ドルもした。
当時でも399ドルという値づけはかなり高額だったが、世界で初めてのメジャーなMP3プレイヤーとしては納得できる価格設定だった。しかし、今ならその半額でもこの製品を選ぶ人は居ないだろう。
かつてのアップルは決算発表の度にiPodの売上を公開していたが、数年前からその売上は「その他」カテゴリに組み入れられるようになった。この部門の売上は近年、かなり好調だ。アップルは2017年の第2四半期決算で、「その他」部門の売上が28億7000万ドル(約3100億円)に達したと発表した。アップルウォッチやAirPod、Beatsのヘッドフォン等の売上が好調だったとアップルは述べた。しかし、iPodに関する言及は全くなかった。アップルがiPod売上の発表をやめた数年前の時点で既に、iPodの死は始まっていたのだ。