中国のアリババが運営するアリペイとテンセントが運営するWeChatペイの2つは、現代の中国人にとって必須の決済手段となった。調査企業のIpsosとテンセントのデータによると、14%の中国人はもはや現金を持ち歩かなくなった。また、26%の中国人は財布の中に100人民元(16ドル以下)を下回るキャッシュしか持っていない。
iResearchのデータによると、2016年の中国のモバイル決済市場は5.5兆ドル(約600兆円)に達したという。これは米国のモバイル決済市場の1120億ドルの50倍近い規模だ。中国の消費者らはインフラさえ整えば、世界のどこに行ってもモバイルでの決済を行えるのだ。
中国人の海外旅行件数はここ20年にわたり上昇が続き、昨年は1億2200万人が合計で1100億ドル(約12兆円)を海外で支払った。世界中の企業が今、中国人旅行者の需要をつかむため、モバイル決済への対応を進めている。アリペイやWeChatペイに対応するためにはさほどのコストはかからない。旅行者らにQRコードを読み取らせるだけでいいのだ。
アリペイは既にホテルチェーンのマリオットやウーバーとグローバル契約を締結した。アリペイはまた、グルメサイトのYelpとニュヨークやロサンゼルス、ラスベガスやサンフランシスコでパートナーシップを結んでいる。WeChatペイもラスベガスのカジノホテルの「シーザーズ・パレス」と契約を結んだ。
世界の小売店やホテルは中国のモバイル決済への対応で新たな需要をつかむことが可能だ。モバイル決済の導入は次の3つのステップで行える。まずは、アリペイやWeChatペイへ店舗の登録を行うこと。次に中国語版のウェブサイトを立ち上げること。翻訳のコストはかかるが、それに見合う十分な収入を得られる可能性は大きい。
さらに、中国でデジタル広告を出稿すること。もちろんこれにもコストはかかるが、何もやらなければ何も得られない。海外旅行に出かける前の中国人に、あなたの店でモバイル決済が利用可能なことを知らせる必要がある。半年ほどの時間をかけて様子を見れば、目に見える成果が現れるはずだ。
これまで世界の小売店の現場では「現金ですか、クレジットカードですか?」と尋ねるのが当り前だった。しかし、これからは「アリペイにしますか、WeChatペイですか?」と聞くのが普通になる。