一方、神戸のベンチャー企業・シンクチューブは、動画カメラと人工知能を組み合わせて、乳幼児の見守りに活用しようとしている。乳幼児は、昼寝など睡眠時に突然死することがあり、その数は年間100人以上にのぼるという。
シンクチューブが開発を進める「見守りシステム」は、睡眠中の乳児の顔色、脈拍、呼吸をAIで判別し、異常が発生すると保育士などに警告を送る機能を持つ。同社は保育施設とともに実証実験を進めており、2017年内に実用化に踏み切る意向だ。
保育園で乳児の突然死が起これば、保育士に責任問題が降りかかるのは想像に難くない。また保育士が自責の念から、職場を離脱してしまうケースも想定しうるだろう。シンクチューブのテクノロジーのの恩恵は、保育関係者にとっても少なくないはずだ。
保育の問題は世界的な課題
待機児童の問題は、日本、特に東京で先鋭化している問題だが、世界に目を向けてみると、保育および育児の領域で社会的課題を抱えた国は多い。その最たる例は中国だろう。
中国では、待機児童ならぬ、留守児童(都会へ働きに出た両親と離れて農村で暮らす児童)問題が浮上して久しい。そして、その課題を解決する手段として家庭用AIロボットへの期待が爆発的に高まっているという。中国・深圳市ロボット協会の畢亜雷秘書長は、AI Lab編集部の記者が以前、取材した際、中国の課題、またビジネス事情について次のように説明した。
「統計によると、中国には7000万人ほどの留守児童がいると言われており、親子のコミュニケーション不足が問題になっています。家庭用ロボットが児童の孤独感を減らし、情感を与え、同時に親の仕事と家庭の両立を手助けする。そういう未来像を実現するため、AI×家庭用ロボットの開発に拍車がかかっています」
保育や育児は、児童のその後の人生を大きく左右する分野だ。そのため、AIなどテクノロジーを使ってコミュニケーション自体を自動化することは好ましくないという意見もある。とはいえ、人手が足りないがために、社会から置きざりにされてしまった子供たちがいることもまた事実だ。
日本においては、保育士の業務負担の軽減、また待機児童問題を根本的に解決してくれるテクノロジーの登場に期待したい。
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