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The IDEI Dictionary 〜変革のレッスン〜


このおよそ5年後、日本にもIT化の波が到来した。当時日本のインターネットはNTTのコントロール下にあり、完全なる独占状態。人々は決められた利用料を毎月NTTに支払わなければインターネットを利用することができなかった。当時、IT戦略会議議長を務めていた私は、インターネットをよりオープンなネットワークにして世界水準にまで引き上げる必要性を感じていたため、日本のデジタルインフラを整えるべくNTTに協力を求めた。

これをきっかけに日本のネットワークがオープンになり、市場に競争が生まれ、KDDIやソフトバンクの参入により利用料は低下した。この動きがなければ、日本は今日ほどインターネットが浸透していなかったかもしれない。

第二の隕石が日本の未来を変える

しかし残念ながら、それでも変化は間に合わなかった。日本の法の下では、検索エンジンの設置が著作権に抵触する、など硬直した規制議論が変化の足を引っ張り、新たなビジネスモデルを確立することを許さなかったのだ。

現在アメリカでは、1995年以降にできた企業が企業価値のランキング上位に名を連ねている。一方日本では、ソフトバンクを除き、上位にはトヨタ自動車や東京三菱UFJ銀行など、30年前のビジネスモデルを踏襲し続ける企業が並んでいる。

つまり日本は、インターネットという大きな変化から富を生み出すことができなかったのだ。これこそが、「失われた25年」の本質である。バブル崩壊からの不景気だけではなく、インターネットの変化から新たな価値を生み出せなかったことで、ビジネスモデルを喪失してしまったのである。

しかし今、世界に第二の隕石が落ちようとしている。しかもそれは、AI、ブロックチェーン、5Gなど、複数の隕石だ。これによってもたらされるビジネスモデルの変化こそ、日本における最大のチャンスとなる。

インターネットの登場時と違うのは、既にメガバンクなどのメジャーな企業も対応に動き始めていることだ。金融の世界にとっては、例えばブロックチェーンが浸透することで、株式上場という概念すら消える可能性がある。金融業界の筆頭である中央銀行やメガバンク、証券会社はその流れにどう動いていくか、準備を急ぐ必要があることに気が付いているのだ。

自動車メーカーも同様だ。自動運転技術の開発が進んでいるが、それは同時に自動車そのものがハックされる危険性を持つようになる。高齢ドライバーの問題より、セキュリティの危機が顕在化してくる。

この転換期をチャンスに変えるには、どうすればよいか。既存のビジネスにAI・ブロックチェーンなどの技術を活用するだけでは、ビジネスモデルになりえない。それらの技術に何かを組み合わせることによって、どんな変革を起こすのかがビジネスモデルの進化のカギとなる。過去と同じことを繰り返さないためにも政府の規制緩和は必須となるだろう。

ベンチャー企業にとっては、一気に世の中を席巻し、トップを狙うチャンスでもある。また今回は、大企業も変化に対して本気の姿勢を見せ始めている。そんな状況の中、ビジネスモデルの進化を成し遂げるのは誰か。社会の枠組みを根本から覆すパラダイムチェンジは、すでに始まっている。

次回、Cに続く(9月7日公開予定)。

インタビュー=谷本有香 構成=華井由利奈 写真=岩沢蘭 取材協力=Quantum Leaps Corporation 撮影協力:Union Square Tokyo

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