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2014.12.31

本誌に登場した識者が評価 「黒田バズーカ」の通信簿




従来の日本銀行には見られないレベルでの金融緩和を実施した黒田東彦総裁。デフレからの脱却を力強く宣言する「黒田バズーカ」は、一流経済人たちの目にはどのように映ったのだろうか?

※以下は「黒田バズーカ」への評価

モハメド・エラリアン「◯」
アリアンツ顧問 / 元ピムコCEO兼Co-CIO
FRBは引き続き、量的金融緩和のアクセルを緩め続ける。日銀は逆に、アクセル・ペダルをめいっぱい踏み続ける。現在、各国の中央銀行により「金融エンジニアリング」が行われているが、日本の場合、それは日本銀行による第3の矢のための時間稼ぎだ。

ポール・シェアード「◯」
スタンダード・アンド・プアーズ チーフ・グローバル・エコノミスト
白川方明前総裁が率いた頃の日銀は、十分なデフレ対策をしてこなかった。その点、黒田東彦現総裁は、「2%のインフレを達成する」という決意を鮮明にしている。こうした市場や社会とのコミュニケ ーションは重要である。黒田総裁はそれをよく理解している。

ロバート・ゼーリック「△」
ゴールドマン・サックス顧問 / 世界銀行第11代総裁
金融政策は大胆で、黒田総裁は自分の役割を果たそうとしている。ただ、彼一人でできることではなく、財政政策がいくらか柔軟性を示すことが肝要だ。首相がもう一段の増税に踏み切らなかったのは正しい。経済が完全に回復したとは言えないので、増税はまちがいだ。

ジャスティン・リン「△」
北京大学国家発展研究院名誉院長 / 元世界銀行上級副総裁
黒田総裁による異次元緩和は構造改革のための時間稼ぎだろう。金融緩和が行われたことは評価できるが、肝心の構造改革がまったく手つかずのままだ。だから、金融緩和そのものは成功かもしれないが、構造改革に寄与したかどうかについては評価を保留せざるを得ない。

ジム・オニール「◯」
ゴールドマン・サックス 元チーフ・エコノミスト
黒田日銀総裁が、この2年間行ってきたことは確かにリスキーだ。しかし、どんな政策にもリスクはある。それが大きな政策であればなおさらだ。それよりも何も手を打たないことが最大のリスク。現時点で第1の矢の出口戦略について心配するのは時期尚早だ。

ジム・ロジャーズ「×」
投資家 / クォンタム・ファンド共同創業者
中央銀行は閉鎖した方がいい。かつて中銀が存在しない時代があり、それはそれで問題が起こるが、いまの中銀は存在することで問題を先送りし、深刻化させている。大量の紙幣を乱発し、我々を人工的な流動資金の海に漂流させている。この実験は、終わったら大きな被害が出る。

ピーター・タスカ「×」
エコノミスト / アーカス・インベストメント創業者
日本はまだ本格的な量的金融緩和(QE)の2年目。アメリカの2011年に相当するので、まだまだ株価上昇は続く。とはいえ、日本はデフレが長く続いたので、インフレ期待を定着させるのに時間がかかる。日銀の黒田総裁が目標としている15年度前後に消費者物価上昇率2%の達成は難しい。

フォーブス ジャパン編集部

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