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2017.08.15 16:30

10人の会議を3000人が観る、「ライブ会議」の可能性

国際会議も行える会議の聖地。あまりのアイデア放出に、マシ・オカ氏も「ヤッター!」と叫ぶ!?

国際会議も行える会議の聖地。あまりのアイデア放出に、マシ・オカ氏も「ヤッター!」と叫ぶ!?

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第24回。企画は会議から生まれ、会議で育つ。仕事で、番組で、そのことを実感した筆者はいよいよ自社に“ライブ会議”をできる場を設けた。


会議は「発想の戦場」である。僕自身、会議のときは他の人よりも絶対におもしろいアイデアを出そうと思うし、誰かのアイデアがすごく良かったら、それをヒントにさらにおもしろいものを考えようとする。

ひとりでじっくり考える時間も有効だけど、違う視点を持った数人で徹底的に話し合う(発想を戦わせる)ことにより、アイデアはさらに磨かれ、実現性を帯びる。さらに仲間意識も築かれる。会議は、楽しくて仕方がない時間であり空間である。
 
そんな僕なので、BSフジから「枠があるので、好きな番組をやってみませんか?」というオファーをいただいたとき、「会議を見せるのはどうだろう?」と思った。ちょうど山形・東北芸術工科大学で企画構想学科を始め、手探りで企画について講義しているところだったので、だったら企画の生まれ方をそっくりそのまま見せるとおもしろいのではないかと考えたわけだ。

そこで2010年1月にスタートしたのが『小山薫堂 東京会議』。台本は白紙で、会議してほしいテーマを一般募集して、ゲストととことん話し合うというのが主な筋書きである。
 
先日の会議のテーマは「観客を増やす良い方法」だった。アイドルシンガーソングライターを名乗る若い女性が、Zepp東京を貸し切ってソロライブをする予定なのだが、2000人のキャパで188席しか売れておらず、困っているという。僕が考えたアイデアは「ライブ会場に個室をつくる」こと。会場全体を埋めようとすると多くの観客が必要だけど、いくつかテントを張って個室をつくり、そのなかに本人が入って歌ってあげれば、そんなに人数は必要ない。観客も狭い密室のなかで自分だけに歌ってくれるという、最高の状況になるのではないか、と提案したわけだ。

「どうすれば埼玉県で、いいお土産ができるか?」という、埼玉観光協会からのなかなか切実なテーマもあった。僕たちがさんざん話し合って行き着いた答えは、「実は埼玉!」というステッカーをつくって貼ること。たとえば東京銘菓の「ひよ子」は、埼玉の工場でつくられているという。だったら、ひよ子に「実は埼玉!」ステッカーを貼れば、埼玉土産として成立するのではないか。商品を新たにつくるのではなく、いまある良いものをどう見せるか、という視点である。

まあ、ひよ子の製造元は嫌がるかもしれないな……と思ってよくよく調べたら、なんとひよ子、福岡発祥のお菓子で、1964年の東京オリンピックをきっかけに東京へ進出したらしい! 福岡で製造されたひよ子には「博多」の文字が全面に入っているというから、あながち僕たちのアイデアは見当違いでもなかったのかもしれません。

「場所」というメディア

番組だけでは飽き足らず、というわけでもないのだけど、6月2日、弊社オレンジ・アンド・パートナーズの旧オフィス空間をリノベーションし、「ORANGE BRAINERY」という店舗を1階にオープンした。猿田彦珈琲の美味しいカフェと小さなマーケット、それにコミュニティスペースがあって、一般の方々とも“ライブ会議”をしようと考えている。

連載第9回で「場所というメディアには力がある。魅力的な場所をつくれば、魅力的な人がそこに集まり、メディアとして高い価値を生み出す」と書いたが、そういう“アイデアが出会う拠点”を社内にもようやくつくったわけだ。

ライブ会議は50人限定。今後の開催テーマをひとつだけ打ち明けると、「吉田照美のこれからの人生を考える会議」というのがある(2017年6月末時点)。タイトルや時間帯を変えながら36年半続いてきた文化放送のレギュラー番組が終わり、「これからどうしようかな」とご本人がいわれたので、照美さんの大勢のコアなファンと一緒に考えるのがいいかなと思ったのだ。

いわば、人の温もりに満ちた“情熱のクラウドファンディング”。お金を出すだけでなく、みんなでアイデアを出し合う、ワクワクする場になると期待している。
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文=小山 薫堂

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小山薫堂の妄想浪費

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