ここでトランプが行うのは統治行為だ。大統領の発するメッセージは、敵・味方の双方にとって生死を左右する影響力を持つ。自分では誇張しているだけのつもりでも、対立国にはそれが完全に理解できないかもしれない。
世界で最も大きな力を持つ人物の一人である米大統領に求められるコミュニケーション手法は、不動産王やリアリティー番組のスターのそれとは異なり、制御された思慮深いメッセージの発信だ。これが毎日、24時間要求される。
リーダーの言葉は常に重要だ。口調や言葉の微妙な違い、自制心が問題となる。巨大な権力には、同様に巨大な責任が付いてくるのだ。
先日、退役大将であるジョン・ケリーが首席補佐官に指名されたことで、トランプの制止役として彼以外に適任はいないという楽観的な空気が生まれた。トランプの手綱を引くことができる人間がいるとすれば、それはタフで年配の大将である彼だろう、と。
しかし、馬は瞬く間に柵から逃げ出し、「炎と激しい怒り」のように制御不能な状態に陥った。これを考えると、この馬はこれからも好き勝手に歩みを進めそうだ。