国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」


GTスポーツの新しい特徴は、それ自体を単なるドライブ・シミュレーターから大きく飛躍させた。その特徴のひとつが、ミュージアム機能だ。ノスタルジックな自動車だけでなく、世界の歴史に興味があれば、この機能のライブラリーに何時間も浸ることができる。

例えば1893年を選ぶと、それはムンクの名画「叫び」が誕生した年であり、カール・ベンツが伝説的なヴィクトリアを生んだ年だと分かる。1969年に飛んでみると、ダットサン240Z(フェアレディZ)が発売になったのは、ニール・アームストロングが月面に降り立った年だと知る。スカイラインGT-RとマツダMX-5が登場したのは、ベルリンの壁が崩壊した1989年だった。

あるクルマが作られた時代の、社会や美術、建築はどうだったのか。人はすぐに思いやることはないが、 それぞれのクルマが誕生した時代の胎動さえも体感できるライブラリーを実現させた。もはや、ゲーム機器ではなく、学習ツールでさえある。

さらに、「スケイプス」というフィーチャーも魅力的だ。クルマの背景をチョイスして、精巧な画像をクリエイトすることができる。たとえば、ブガッティ・ヴェイロンをローマのコロセウムに置き、回転させたり照明を調整したり。またアストン・マーチン・ヴァンキッシュに、グランド・キャニオンの朝の光を降り注がせることも。想像力を凝らせば、自分だけの画像を生みだせる。

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とはいえ、やはりGTスポーツの最たる目的はレースを楽しむことだ。圧倒的なコントラストで深く鮮明な映像に加え、新しい発見は多彩なパーソナリティを持ったAIドライバーだ。レースが始まると、自分の周りに現れる他のドライバーたちの圧倒的なリアリティに驚かされる。コーナーでふくらみ過ぎたり、ブレーキを踏むポイントを外したり、接触や衝突を起こした時に体感するリアリティは、他に類を見ない。



まったく文句がないのか、って? 実は、GTスポーツはすでに予定から1年以上遅れての発売だ。しかも、これまでよりかなり複雑になっているので、搭載されたファンクションを理解するにはちょっと時間がかかるだろう。本社でのプレビューで近未来にタイムスリップした僕は、自宅のテレビを見たときにその時間差に驚き、GTスポーツのとんでもない進化に改めて圧倒された。


文=ピーター・ライオン

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