鎮痛剤乱用がまん延の米国、関連疑う交通事故死は20年で7倍に

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オピオイド系鎮痛剤などの処方薬の影響下で車を運転し、事故死したと見られるドライバーの数が過去20年間で7倍に増えていたことが分かった。米コロンビア大学メールマン公衆衛生学部が7月下旬に発表した報告書によれば、こうしたドライバーのうちオピオイド系の処方薬を服用していた人の割合は、1995年の1%から、2015年に7%に増加している。

疫学が専門でこの調査を主導した同大学の教授は、「オピオイド系鎮痛剤は眠気や認知機能の低下を引き起こすことがある」と指摘。「700%増という調査結果は、重大な懸念を与えるものだ」と述べている。

学術誌アメリカン・ジャーナル・オブ・パブリック・ヘルス電子版に発表された報告書によれば、オピオイド系鎮痛剤の「オキシコドン(oxycodone)」や「ヒドロコドン(hydrocodone)」、「メサドン(methadone)」などの年間の処方件数は、1991年の7600万から2014年にはおよそ3億と4倍に増えており、新たに医療以外の目的で使用を始める人は、1日当たり約3900人と推定されている。その結果、オピオイド系鎮痛剤の乱用や過剰摂取は公衆衛生上、米国全体の危機とされる状況をもたらしている。

調査では交通事故死した人の毒性試験を実施している5州に関する連邦機関の過去20年分のデータを収集。事故発生から1時間以内に死亡したドライバーについて分析を行った。

データを分析したドライバー3万6729人のうち、24%にはアルコール以外の薬物への陽性反応が出ていた。このうち3%が処方薬であるオピオイド系鎮痛剤に陽性を示した。これら処方薬に陽性反応が出たドライバーの30%は血中アルコール濃度が高く、67%はその他の薬物に対しても陽性反応を示していた。

ドライバーのうちオピオイド系鎮痛剤を使用していた人の割合は男性が3%、女性が4.4%で、女性の方がやや高かった。

報告書は、コロンビア特別区(首都)を含む米国の全州でオピオイド系鎮痛剤の処方に関するデータを収集・記録する処方薬監視プログラムが実施されているが、交通事故との関連性についてはほとんど実態が解明されていないと指摘。

研究者たちには今後、どのオピオイド系鎮痛薬をどの程度服用することで、ドライバーにはどのような影響が出るのか、より詳細な調査を行うことが呼び掛けられている。

編集=木内涼子

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