次世代ロボットの登場で「ホテル体験」はどう変わる?

シンプルかつ丸みを帯びたフォルムは、どこか愛らしさを感じさせる。「人のまわりで動くロボットだから、安全性を重視した」とカズンズ。画面にはメッセージだけでなく、感情を表す目のアイコンもついており、荷物を届けた後、客に「満足度」を評価してもらえる


ただし、ホテルはあくまで「第1のステップ」だという。同社が14年にロボットを現場に投入してから、すでに累計で12万回以上もデリバリーを行ってきた。その約半数はホテルだが、残りは修理工場や病院、オフィスなどとなっている。

「検証の結果、ソフトウェアを大きく書き換えることなく、他の業界にも適用できることがわかってきました。Relayのもつ可能性にワクワクしています」

カズンズは目を輝かせながら語った。ソフトな声で、物腰は柔らかく、ロボット好きの少年が大人になったみたいだ。

ロボットと人は共存できるか

サビオークが今、最も力を入れているのが日本市場だ。NECネッツエスアイやマクニカと代理店契約を結び、まもなく日本のホテルでもRelayを提供できるという。

日本について、カズンズは「文化的にロボットへの関心がとても強い。ロボット業界にいるなら、来なければいけない場所だ」と語る。実際、10年ほど前から年2回のペースで来日しているという。

一方、仕事のロボット化に対しては、「雇用を奪われる」という懸念も少なくない。カズンズはロボット業界のリーダーとして、どのような未来を描くのか。

「われわれのビジョンは、『人を助けるロボット』を作ることであって、ホテルから従業員を排除することではありません。人の仕事には、高価値のものと、そうでないものがある。フロントデスクでいえば、お客がチェックインするときに対面で接客するのは高価値の仕事です。でも歯ブラシを客室に届けるといった仕事は、ロボットの方が上手だし、低コストでこなせます。低価値の仕事をロボットに任せることで、人はより高価値の仕事に集中できる。そうすれば人はもっと生産的になれるのです」

Relayが日本で話題になる日も近いだろう。そして私たちはどうすればロボットと共存できるか、考えるべき時にきている。


デリバリーを終えるごとにステーションに戻り、自動で充電するので、24時間365日稼働できる(右)。 米国内では1台あたり月額約2000ドルのサブスクリプション(サポート保守込み)となっている。


スティーブ・カズンズ◎ロボットベンチャー「Savioke」のCEO。非営利団体「OpenSource Robotics Foundation」の理事。スタンフォード大学で博士号(コンピュータ科学)を取得後、Xerox PARC(Palo Alto Research Center)、IBMAlmaden Research Centerなどを経て、PR2ロボットやTurtleBot、ROSを生み出した伝説的ロボットシンクタンク「Willow Garage」のトップとして「パーソナルロボット革命」を率いた。2013年より現職。米シカゴ出身。53歳。

文 = 増谷 康

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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