透明のガラス瓶に入った、光の具合によって様々な色に見えるカプセルが、アボカドやトーストといったSNS映えする食べ物と一緒に写っている。同じくミレニアル世代に人気のブランド、グロシエ(Glossier)のスキンケア用品の隣に並んでいる写真もある。絵になるのはカプセルとガラス瓶だけではない。白と黄色の配送用の紙箱のデザインも“スーパー・シェアラブル”(SNS上でシェアされやすい)と言える。
「ビタミン剤を摂ることがこんなに楽しいなんて、という声をよく聞きます」と、創業者CEOのカテリーナ・シュナイダーは笑う。(ちなみにRitualもグロシエもEコマースの第一人者、カースティン・グリーン率いるForerunner Venturesが出資している。両社の商品が一緒に写っているのは偶然ではないだろう)
Ritualは、9つの栄養分を含んだマルチビタミン剤60錠入りのボトルを月額30ドルで定期販売するスタートアップだ。シュナイダーは、敏腕音楽マネージャーとしても有名なトロイ・カーター率いるエンジェル・ファンド、AF Squareでパートナーを務めた経験を持つ。自身の妊娠をきっかけに、体にやさしく透明性の高い食品や日用品を探すようになったシュナイダーは、そのようなビタミン剤が普及していないことに気づき、2016年に起業、360億ドル(約4兆円)の米国ビタミン剤市場に参入した。
単なる錠剤ではなく「習慣」を売る企業に
シュナイダーは昨秋のシードラウンドにおいて、Forerunner Ventures、Norwest Venture Partners、Upfront Venturesなどから350万ドル(約3.9億円)を資金調達。そしてFounders Fundを主幹事としたシリーズAでは、シードファンドの3社を含む出資者たちから1050万ドル(約11.6億円)を資金調達した。現時点までに調達した総額は1500万ドル(約16.6億円)を超える。
また、Founders Fundの参加により、同社パートナーのブライアン・シンガーマンがこれまで女性で占められていたRitualの役員に加わった。
シリーズAで集まった資金は主に、現在販売中のマルチビタミン剤の他に、妊婦用ビタミン剤をはじめとする新商品の研究・開発に投入される。また一部は、女性のライフスタイルのプラットフォーム化を目指す同社事業の一環として、生活習慣やリチュアル(儀式)に関するコンテンツの制作に使われる予定だ。
シュナイダーによると、顧客層の30%は、それまでビタミン剤を摂る習慣がなかった人々であり、70%がRitualのビタミン剤を摂ることを楽しんでいるという。Ritualのビタミン剤にはミントの味がついており、お菓子感覚で摂取できることも理由の一つだろう。シュナイダーは言う。「私たちが売っているのは錠剤だけではありません。習慣なのです」