ライフスタイル

2017.08.12 17:00

頭で飲むワイン「法律とワインの意外な共通性」


1
シャンパーニュ地方アヴィーズ村のブドウ畑(2017年6月撮影)

わたしがワインを飲むようになったのは、今から10年ほど前、大学院への留学でカリフォルニアに住むようになったことがきっかけだった。ナパやソノマといったワインの名産地が身近にあり、気軽にワインを楽しむことができたのだ。

東京に戻ってから、ワインスクールへ通うようになった。さらに、ワイン好きの友人の影響で、カリフォルニア以外─特にフランス、イタリアのワインを飲む機会が増えた。

その後、再び海外転居の機会が訪れた。国際機関で働くため、パリに住むことになったのだ。友人たちには「ワインのためにフランスでの勤務を選んだ」と言われたものだ(笑)。実際、ヨーロッパ内は旅行がしやすい上、フランスにはバカンスの文化がある。夏は2〜4週間の休暇が当たり前だ。週末や長期休暇のたび、フランス国内だけでなく、イタリアやスペイン等のワイン産地へ足を運び、ますますワインを好きになった。

2014年の夏、アメリカのシリコンバレーへ移住した。少し時間ができたこともあり、「本格的にワインの勉強がしたい」という気持ちが蘇ってきた。

思い立ったが吉日。その日のうちに、WSET(Wine & Spirit Education Trust)へ電話で申し込みをした。WSETは、イギリスの団体が主宰している国際的なワイン資格だ。Level 1~4までのランクがあるが、まずLevel 4に進むための条件であるLevel 3の取得に挑んだ。Level 3に合格したあとは、すぐに最高ランクであるLevel 4、Diploma資格へ進んだ。現在は、最低2~3年かかると言われている、この資格の取得への道半ばにある。

その勉強の合間に、日本ソムリエ協会のワインエキスパートや、アメリカのソムリエ団体であるCourt of Master Sommeliersの入門資格も取得した。気が付けば、ここ2年ほど、本業の傍ら、日々の生活における「ワイン」の比重がどんどん増えている。

WSETをはじめとしたワインの資格試験や品評会では、「ブラインド・テイスティング」という方法をとることが多い。目隠しをして試飲を行うことで、先入観なくワインを評価することができるからだ。

目隠し状態で銘柄を当てることは大事だ。しかし、クイズのように銘柄を当てることよりも、香りや構成要素を基に、ワインを客観的・論理的に分析して評価する能力が求められる。

実際、世界のワイン業界の最高峰に位置する「マスター・オブ・ワイン協会」の試飲講習会に参加したときには、再三、「Think like a lawyer(弁護士のように考えて!)」と言われたものだ。

ワイン好きであれば誰にでも共感してもらえることだが、ワインは、わたしたちに刺激的な出会いをもたらしてくれる。わたしも、カリフォルニアに住み始めた頃はワイン関係者を誰一人知らなかったが、WSETの勉強を通じて、多くの友人・知人を得た。アメリカ、特に今住んでいる、シリコンバレーのオープンな空気も影響しているのだろう。

ワインを片手に、共通の趣味を持つ友人と楽しい時間を共有できることこそ、ワインの最大の楽しみだ。

この数年を振り返ると、ワインのお蔭で、文字通り、世界が広がったと感じる。

飲み手としてワインを楽しむとき、特別な知識はいらない。わたし自身、頭でっかちになりがちであるが、「美味しい、楽しい」と思うことが一番大事というのが信念だ。なぜならワインは、楽しむための飲み物なのだから。

ただ、少しでも知識があると、さらに興味がわくのもワインの面白いところ。これまで、わたしがワインのお蔭で生活が豊かになったように、周りの人にもワインの魅力を伝えたい、そしてワイン人生でお世話になっている方々に少しでもお返しできたら、という思いだ。

この連載では、読者の方々が、ワインを飲むときに少しでも面白いなと思えるような話題や、ワインを飲まない方にとっても、小話として興味がわくようなトピックを紹介していきたい。

Text by Yuri Shima Edit by Momiji Tobimatsu

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事