ビジネス

2017.08.06

丸山珈琲の「思い」を叶えた、日本型クラウドファンディング

丸山珈琲代表の丸山健太郎氏(左)とミュージックセキュリティーズ社長の小松真実(photograph by Kosuke Mae)


小松は以降、その思いが届く範囲を拡大させてきた。09年からはジャンルを問わない、事業者のためのマイクロ投資プラットフォーム「セキュリテ」を開設。11年には、東日本大震災からの復興を目指す企業を支援するための「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げた。

現在、30の地方自治体と協定を結び、70の地域金融機関と業務提携し、地域企業向けの「ふるさと投資ファンド」も組成している。

さらに、IDBとも連携し、ペルーの日系人がつくったアバコ貯蓄信用協同組合への資本増強を行うファンドを組成するなど、ミュージックセキュリティーズが提唱する、「共感を大事にする金融へのパラダイムシフト」はいま、着実に世界に広がりつつある。

さらなる進化を目指す

「個人投資家の『インパクト投資』プラットフォームになる」ー 。小松はこれから、新しい挑戦をはじめる。

インパクト投資とは、J.P.モルガン、ロックフェラー財団、GIINの共同レポートによると、「利潤最大化を目的とした伝統的投資と社会的インパクト最大化を目的とした寄付の動機をひとつにした新しいタイプの資本」。ESG投資のひとつで、ゴールドマン・サックス、ブラックロックなど世界的金融機関が実施。投資運用残高は20年には1兆ドル(約109兆円)という予測も出ている、新しいトレンドだ。

小松は、その個人投資家版のプラットフォームをつくるという。「これからの使命は、定性的な『共感性』が及ぼした影響を定量的な『データ』で示していくこと。あなたの1万円が、どれだけ経済的、社会的なインパクトを出し、社会をよくしているのかをしっかりと数字で伝えることだと思っています」

丸山珈琲への投資も、小松が考える個人投資家の「インパクト投資」のひとつだ。コーヒー豆生産者への日本人投資家の投資が、生産者と家族、その地域の経済を豊かにし、子どもたちの教育水準を上げ、さらなる地域の持続的な発展につながるかもしれないからだ。

最後に小松は一言付け加えた。

「このインパクト投資を前進させるのは、我々がこれまで積み上げてきた、日本人投資家の『共感』『思いのある投資』ではないか、と思っています。一部の富裕層だけではなく、一般の人たちが積極的に参加するのは日本の文化。個人金融資産も膨大にあるため、欧米の大資産家による篤志よりも、社会に与えるインパクトが大きくなる可能性もある。これからは、社会的インパクトを期待して投資をする個人投資家を増やし、『JAPANモデル』を世界に広め、日本発グローバルな個人投資家のための『インパクト投資プラットフォーム』を目指していきたい」

誰もが持つ無償の財産、「共感」「思い」はお金と掛け合わされることで、我々が想像もできない、新たな価値を生み出していくかもしれない。


小松真実◎ミュージックセキュリティーズ代表取締役。学生時代に「アーティストを支援するための音楽ファンド」のアイデアを思いつき、2000年に起業。13年には世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出された。

丸山健太郎◎丸山珈琲代表取締役。1991年に創業し、自らバイヤー、カッパーとしても活動。2004年、ヨーロッパ スペシャルティコーヒー協会若手起業家賞受賞。現在はカップ・オブ・エクセレンス国際審査員なども務める。

文=山本智之

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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