市民先生3000人、「安全、豊かな放課後」を小学生に!

一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ代表理事の白石智哉氏(左)、放課後NPOアフタースクールの平岩国泰氏(右)

学童保育の待機児童は潜在的に30万人以上といわれ、保育園同様、小学生の待機児童の問題が大きくなっている。それに加え、子どもたちが被害にあう事件の約7割が午後3時〜6時に起きている。

そんな現状に対し、放課後NPOアフタースクールが活動を開始したのは2005年。放課後の小学校施設を活用し、1〜6年生の誰でも参加可能、地域住民や専門家ら「市民先生」によるプログラムという特徴のもと、安全で豊かな放課後を子どもたちへ届けるための「アフタースクール」を運営してきた。

転機は13年12月。「毎日を生きるのに必死だった」と当時を振り返る同代表理事の平岩国泰に対し、日本財団とソーシャル・インベストメント・パートナーズ(SIP)による日本初の本格的なベンチャー・フィランソロピー基金「JVPF」が、助成金2000万円などの支援を始めた。

「KPI設定での“効果の可視化”や、プロボノパートナーによる“組織基盤の構築”を通じ、3〜5年後の目標を明確化させたことで、NPO発足後に忘れかけていた企業の“投資発想”を取り戻せた」(平岩)

13年度と16年度の各数値を比較すると、支援が行われた3年間の変化は顕著だ。収入は6560万円から3億2700万円へ、常勤スタッフ数は5名から35名へ、小学生の年間延べ参加人数は3.5万人から13.5万人へ、学校数は3校(すべて私立)から14校(5校が公立)へ、市民先生は累計で3000人以上となり、協働する企業数も100社を超えるなど大幅に伸びている。千葉市内小学校10校での放課後総合コーディネイターも担っている。

SIP代表理事の白石智哉は、ベンチャー・フィランソロピー基金の意義について、「ベンチャー投資やプライベート・エクイティ投資のノウハウを活用し、事業成長の健全な好循環をつくり出す。経営支援、財務支援、ガバナンスの実行に加え、社会的インパクトを“見える化”し、受益者に対する成果へつなげていきます」と話す。

企業と連携した子育てプロジェクトも広がりを見せている。住友生命保険とは全国対象の学童保育等応援、カルビーや不二製油とは食に関わる取り組みを行う。

「支援は17年3月で終了しましたが、次の3年の事業計画を語り合い、もう一度支援することも考えています」(白石)


平岩国泰◎特定非営利活動法人放課後NPOアフタースクール代表理事。2004年長女の誕生をきっかけに活動を開始。

白石智哉◎一般社団法人ソーシャル・インベストメント・パートナーズ代表理事。フロネシス・パートナーズ代表取締役。

文 = 土橋克寿 写真 = 平岩享

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事