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企業、リーダーから「新たな動き」

日本の企業の中にも、従来あまり重視しなかった社会的利益を追求する新しい動きが出始めています。経済的な利益ばかりではなく、環境や社会的な利益を追求することが企業の価値を高めるという「CSV(Creating Shared Value)」的な考え方で、社会的な利益を考慮した独自の経営指標を設定する味の素やキリンビールがその代表例です。

自身で築いた富を社会に還元するため、動き出した富裕層もいます。マイクロソフトの創始者、ビル・ゲイツ氏は引退後、ビル&メリンダ・ゲイツ財団をつくって「socialgood(社会善)」のために自らの富を活用しようとしています。

富裕層の影響力は大きなものです。とはいえ、フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が唱える「国際累進富裕税」のように、強制的に富を差し出すよう求めるのは現実的ではありません。あくまで内発的、自発的に社会のために富を差し出してくれる状況になることが望ましいです。

金融技術の進歩は、すべてのものをキャッシュフローの源泉とみなし、そこから生み出される将来のキャッシュフローのすべてを現在価値に割り戻した数字を、その経済的価値であると捉えるようになりました。金銭に換算できない価値については正当に評価せず、「無価値なもの」という間違った認識を広めてしまいました。

しかし、本当に重要なのは、貨幣や市場が提供する「フィクション」の部分を便利な道具としてわきまえ、我々人間の感情や心性や肉体といった「リアル」な部分との間に明確に線引きすることです。

資本主義は、福祉部門とのバランスを取ることで初めて持続可能なものになるのです。ビル・ゲイツ氏のような一部の富裕層の動きは、現在の資本主義のゆがみを修正しようとして始められたものです。よりよい資本主義の形を実現するためには、こういった社会の不平等を正そうという思いを持つ富裕層や起業家や企業人が増え、「自発的な富の循環のモメンタム」を強めていくことが何より大切だと思います。


堀内勉◎日本興業銀行、ゴールドマン・サックス、森ビル・インベストメントマネジメント社長を経て、2015年まで森ビル専務CFO。現在は多摩大学大学院特任教授、青山学院大学大学院客員教授などを務める。著書に『ファイナンスの哲学』他。

文=堀内 勉 編集=池田正史

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