海外展開か門外不出か、大チャンス時代の経営戦略とは

旭酒造の桜井一宏社長


矢都木:変に周りを意識しないっていうのは大切なことですよね。僕は、後ろを振り向かないことに決めているんです。世界一格好いいラーメン屋でありたい、という目標があるから。

桜井:世界一! 素敵ですね。

矢都木:マラソンでも、後ろを見ると「追い付かれないように」という心境になります。それではお客様を見ていることにならない。麵屋武蔵っていう名前を聞いた瞬間に「なんかおもしろいことやってるラーメン屋」って思ってもらえるように、革新的で上質なラーメンを追求し続ける。それだけです。

──ところで先ほど海外へ攻め込む話がありましたが、感触はいかがですか?

桜井:まだまだ日本酒はおのぼりさんですね。下駄を履いている気がします。でもおそらく一歩先に進むと、国によって違う反応があると思うんです。例えばワインの国で言うと、フランスは文句を言いながらも飲む人が多い。イタリアはそもそも飲まない。

矢都木:イタリア人は、ホームメイドのパスタと地元のワインが大好きですからね。

桜井:そこに入っていくには、まだまだ距離があるなと感じています。でも一線を超えたら、状況は変わると思います。もしかしたらフランス人がワインを守るために日本酒を排除するかもしれないし、意外にもイタリア人が日本酒を好きになってくれるかもしれない。それはそれで楽しみでもあります。

──そんな時代を生き抜くために、お二人が大切にされている経営者としての哲学を教えてください。

矢都木:僕の人生哲学は「人生は思い通りになる」ですね。学校も、仕事も、ライフプランも、全て自分で選んできたもの。選択肢がなかったと言う人は、例えば「勉強しない」という選択をしたことで、将来の進路を狭めてしまったのではないかと僕は思います。人生は自分が選択したものでできている。だからなんでも、自分の思い通りになるんですよ。

桜井:私も、好きな道を選んで進めば、次の景色が見えてくると思っています。哲学とは少し違うのかもしれませんが、何となく実感としてあるんです。前へ進んで行けば新しい景色が広がり、選択肢が増えていく。その中で好きな方法を選び、真剣に頑張れば、また次の道が見えてきて、好きな方へ行ける。

矢都木:想いが道を拓いていくんですよね。真正面から見たら手が出ないほど難しいことも、自分から動いて見る角度を変えてみると、意外な光が見えてきたりします。強い想いを持って突破口を探せば、進むべき道が必ず見えてくるんです。

桜井:本気を出せば、たいていのことは何とかなるんですよね。逆に言うと、嫌いな方向への努力はしないほうがいい。

矢都木:自分は何が何でもこうなりたい、っていう想いが大事ですからね。

桜井:自分でもそう感じるし、周囲を見回しても、そうしてきた人のほうが成功しています。本気で進んでいくほうがきっと楽しいですよ。死ぬ前に「この道を選んでよかった」と思える生き方をしたいですね。[第5回に続く]


桜井一宏◎旭酒造代表取締役社長及び四代目蔵元。2009年まで常務取締役、その後2016年9月まで取締役副社長として海外マーケティングを担当。米国、香港、シンガポール、フランス等でのイベントやセミナーを通じて獺祭の海外売上を促進し、12年間で28倍にした。2016年10月より代表取締役社長に就任。四代目蔵元となる。

矢都木二郎◎麺屋武蔵 代表取締役社長。埼玉県生まれ。城西大学卒。大学卒業後、いったん一般企業に就職するが、24歳で独立開業を目標に麺屋武蔵に転職。以来、麺屋武蔵一筋。27歳で上野店店長に昇格。店の運営・経営を任される。2013年11月11日、先代社長からバトンを受け2代目の代表取締役社長に就任する。

インタビュー=谷本有香 構成=華井ゆりな 写真=藤井さおり

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