「業界研究」より「自社研究」 旭酒造と麺屋武蔵の共通点

旭酒造の桜井一宏社長(左)、麵屋武蔵の矢都木二郎社長(右)


桜井:経営者としても、それを伝えていくのが大切だと思っています。「お客様がこんな笑顔になっていたよ」「美味しいと言って飲んでいたよ」と口頭で伝えたり、実際に見てもらったりすると、社員は自然にお客様のほうを向いていく。

矢都木:実際に何か取り組みをされていますか?

桜井:取り組みというより、自然に起きたことなんですが……。私が前職をやめて旭酒造に入社した頃、社員たちはお客様が見学に来ていても誰一人挨拶をしていなかったんです。何となく恥ずかしいのか、ちらっと見て引っ込んでしまう状態。でも、数年前から変わってきたんです。しかも私が何か手を打ったとかではなくて。

お客様のおかげなんですが、「ここのお酒おいしい」「楽しかった」という言葉を聞いた社員たちが、自分の仕事がお客様の幸せにつながっていることを実感したんです。そうしたらもう「旭酒造さんは挨拶がいいね」と褒められるくらいになって。お客様の気持ちを社員に伝えていくことが、社員をレベルアップさせる一番の近道だと思っています。

矢都木:お客様の笑顔がモチベーションの向上につながり、獺祭の旨さを生み出しているんですね。自分のためではなくお客様のため、それが一番だと気づけたとき、人は成長するんだと思います。[第3回に続く]


桜井一宏◎旭酒造代表取締役社長及び四代目蔵元。2009年まで常務取締役、その後2016年9月まで取締役副社長として海外マーケティングを担当。米国、香港、シンガポール、フランス等でのイベントやセミナーを通じて獺祭の海外売上を促進し、12年間で28倍にした。2016年10月より代表取締役社長に就任。四代目蔵元となる。

矢都木二郎◎麺屋武蔵 代表取締役社長。埼玉県生まれ。城西大学卒。大学卒業後、いったん一般企業に就職するが、24歳で独立開業を目標に麺屋武蔵に転職。以来、麺屋武蔵一筋。27歳で上野店店長に昇格。店の運営・経営を任される。2013年11月11日、先代社長からバトンを受け2代目の代表取締役社長に就任する。

インタビュー=谷本有香 構成=華井ゆりな 写真=藤井さおり

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