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2017.07.26

政府主導で成長、社会「監視」ビジネス

Johnny Habell / shutterstock

「ビデオ監視」関連ビジネスの成長に対する期待が高まっている。犯罪への恐怖心とプライバシー侵害に関する主張を控える傾向は、そろってこのビジネスの成長を必然的なものにした。

新たなテクノロジーに後押しされるビデオ監視は、「サービス」へと変化している。爆発的な成長期に入るのはもう間もなくのことだろう。市場調査・コンサルティング会社のマーケッツ&マーケッツの報告書によると、2016年に303億7000万ドル(約3兆3700億円)規模だった画像監視サービス(VSaaS)は、2022年には756億4000万ドル規模にまで成長すると見込まれており、この間の年平均成長率は15.6%と予想されている。

需要増をもたらしているのは、犯罪率が上昇しているという認識の高まりと、テロ攻撃の増加、ビデオ監視を容認する気運の高まりだ。同時に、カメラのセンサーやネットワークストレージなどは価格が低下している。

さらに、自動化技術も進化を続けている。ビデオ監視ビジネスは従来、労働集約型だった。毎日24時間体制で、人間が監視する必要があった。だが、その業務の大半は現在、たとえ暗闇の中でも人間の顔を認識したり、動きを検出したりすることができるソフトウエアとアルゴリズムに取って代わられている。

中国は2005年、「スカイネット(Skynet、天網)」と名付けた野心的なプログラムの下、全都市の中心部に全方位型カメラを設置する計画に着手した。英字紙チャイナデイリーによれば、このプログラムは2015年までに完了しており、首都北京の市内にも至る所にカメラが設置されている。また、米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、国内に取り付けられている監視カメラの台数は、約1億7000万台に上るという。

さらに、中国政府は個人の顔を識別するソフトウエアを通じた情報を入手し、膨大なデータベースを作成している。モバイルアプリにログインする際やオフィスビルへの出入り、銀行の現金自動預入支払機での出金の際など幅広く利用されている顔認証データのデータマイニングや分析が行われている。

また、こうしたカメラでは捉えることができない情報を集めるため、政府が作ったボットが定期的にソーシャルメディア上を「巡回」しているという。

一方、ドバイでは街中に設置されている監視カメラに加え、年内には小型の自動運転車によるパトロールが開始される。疑わしい人物が逃走すれば、ネットワークで接続された監視カメラ搭載のドローンが、上空から追跡する。

新しいテクノロジーは、新しい産業や新たなビジネスモデルを生み出す。VSaaSはその一例だ。そして、巨大な潜在市場であるにも関わらず、VSaaSの利用拡大はこれまでのところ、ほとんど投資家たちの注目を集めていない。

北米のビデオ監視が中国ほどに拡大するのはまだそう近い将来のことではないだろう。だが、空港やスタジアムなどの人が多く集まる場所に設置される監視カメラの数は、増加している。テロの発生や出入国の制限といった現在の環境の下では、こうした傾向は今後も続き、関連市場は急成長を遂げていくと見られる。

編集=木内涼子

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