ランドセル最大手「セイバン」社長を支える3つの言葉

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「天使のはね」の爆発的ヒットでその名を全国区としたランドセル業界最大手のセイバン。36歳で家業を継いだ泉貴章氏は「少子化」という究極の難題を前に、社員の意識変革に取り組んでいる。


終戦後の1919年、曽祖父にあたる泉亀吉が播磨地方で産出された皮革をもとに、カバンや財布などを製造する会社を設立。46年よりランドセルの製造を開始したセイバンは、2019年で創業100年を迎えます。

03年、父が社長だった時代には生産本部技術スペシャリストが開発した、肩ベルトの付け根に羽根の形状の樹脂を埋め込んだセイバン独自の「天使のはね」が、小さな子どもでも重く感じないランドセルとして大ヒットしました。しかし、現在では少子化という大問題に直面し、またランドセルの色やデザインの多様化も起きているので、問題は山積しています。

私は10年10月にセイバンに入社したのですが、社長だった父を3カ月後に亡くし、36歳で社長に就任しました。今日までいちばん苦心したのは、工場ごとにバラバラだった意識をいかに統合していくかということ。

例えば、発明された知的財産に対して、発明者を社員ベースで認定し、報奨制度にてインセンティブを与えたり、社員のポテンシャルやスキルを上げるために毎月初めに各事業所を回って朝礼を実施したりしています。

特に、大量生産で成功体験を得た社員に対して「時代が変わった。考え方を変えてくれ」とお願いしているわけですが、正直なかなか激しい抵抗にあっています(笑)。それでも、毎年6月の全社員面談で、会社の進むべき方向性を少しずつ共有できていると実感しています。

前職はサントリーでした。創業者の鳥井信治郎氏が「やってみなはれ。やらなわからしまへんで」という名言を残していますが、その「やってみなはれ精神」は実際にサントリーの全社員に刷り込まれていました。この言葉を自分のものとして、積極果敢にチャレンジする風土に恵まれていたのです。

私自身も入社3年目で熊本のビール工場立ち上げに1年間参画し、製品管理に従事したのですが、「失敗したとしても、その失敗から学べばいい」ということを肌身で知るよい機会となりました。

影響を受けた人は、やはりサントリー2代目社長・佐治敬三氏です。商人気質を大事にしながら、不採算だと思われるビール事業に果敢に挑戦していった意気に感銘を受けています。
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構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN No.36 2017年7月号(2017/05/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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