現在、そのドローン業界で注目を浴びているのが、人工知能(AI)技術との相乗効果だ。最新テクノロジー同士を組み合わせることで、さらなるイノベーションを達成しようという動きが、世界各地で徐々に始まろうとしている。
ここでは実際に始まっている「ドローン×人工知能プロジェクト」について、いくつか例をあげて紹介したい。
山間部での救助活動に対応
ヨーロッパの観光大国・スイスでは、アルプスでハイキング中に負傷・遭難した人々の救助要請に効率的に対応するため、ドローンにAI技術を採用しはじめた。スイスの山々は観光名所やレジャースポットでもあるが、危険が偏在している場所でもあり、毎年約1000件の救助要請が当局に寄せられるという。そこでチューリッヒ大学、非営利の人工知能研究所・SUPSIなどが協力。ドローンにAI技術を搭載し、アルプスでの救助に活用するプロジェクトを進めている。
同プロジェクトにおいては、ドローンがハイキングコースをカメラで認識しながら飛行。通報のあった救助エリア付近に到着すると、要救助者を識別し、正確な位置を救助する側に送信する。
このタスク遂行中に必要になってくるのが、対象を正確に識別する画像認識や映像解析など、人工知能の技術だ。当然だが、要救助者を正確に把握することができなければ、救助作業を自動化することはできない。そのため研究グループは、ディープニューラルネットワークの一種である畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network、以下CNN)ベースのアルゴリズムを利用した映像分類機をドローンに実装。要救助者の認識率を高めていると説明する。
なおディープラーニングの画像認識の精度は、すでに人間のそれを超えたという企業・研究各所などの報告が相次いでいる。スイスでは、人間の目よりも正確な“ロボットアイ”をドローンに搭載することで、山間部でのタスクに対応しようというわけだ。
人間とドローンの意思疎通が可能に
人工知能技術を使って、対象の検出率をあげるという試みは、米国でも始まっている。ボストンに拠点を構えるNeuralaはさらにもう一歩進んで、人間とマシンの“意思疎通”を可能にした。
Neuralaのソリューションの仕組みは次のようになる。
まずドローンがカメラで建物や自動車、人を撮影すると操縦者側にデータが送信される。次いでデータを受け取った操縦者が、スマートフォンなど端末のタッチパネルを利用して、画像の特定部分を指定。すると、そのデータがドローンに再送される。このとき、ドローンはマシンラーニングが採用されたソフトウェアを通じて、指定された部分を理解する。そして対象をより詳細に撮影し、操縦者にデータを再送信する。また、指定された対象が移動した際には、追跡を行いながら撮影データをリアルタイムで送信する機能もあるという。