人気の「ミールキット」は毎日の献立を考えるという頭痛の種をなくしてくれるほか、食料品購入の手間も解消してくれる。食料品店での買い物や外食ではなく、同社サービスの利用を選ぶ人はますます増加している──同社を有望視するアナリストらは、こうした点に注目している。
アナリストたちが指摘するとおり、魅力的なのは同社にとっての機会の大きさだ。米国では食料品の購入に充てられる金額は年間およそ8000億ドル(約89兆円)。だが、このうちネット通販による購入額が占める割合はわずか1%にとどまっている。
大手投資銀行オッペンハイマー・ホールディングスのアナリスト、ジェイソン・ヘルフスタインは自らの顧客に対し、ブルーエプロンのサービスは食料品・レストラン向け支出の多くを奪うことになるとの見解を示すとともに、次のように述べている。
「大規模なこの市場がミールキット事業の成長を支え、それがブルーエプロンの売上高の伸びを後押しすることになるはずだ」
2012年創業のブルーエプロンは、米国のミールキット宅配部門では最大手。利用者は約100万人に達し、昨年の売上高は8億ドルに上った。また、英バークレイズのアナリストは、ブルーエプロンの利用世帯は恐らく今後、3500万に達すると見ている。米国の1世帯当たりの食料消費支出は、1週間当たり少なくとも100ドルだ。
一方、今度どれだけの世帯が同社のサービスを試し、利用を継続するかについては不透明だと見るアナリストもいる。業界の先駆者である同社の売り上げは、ミールキットにどのような需要があるかを広く示すものでもあるが、競合相手も数多く、顧客の忠誠度を確実なものにするという点で難しさを抱えている。
さらに、米銀サントラストのアナリスト、ユセフ・スクアリは、「市場がどの程度まで拡大し得るのか、いくらかの不透明感がある」と語る。ただ、それでも同社は急速な成長を続けるとの見方だ。
最大の脅威はアマゾン
ブルーエプロンにとっての最大の脅威は、ネット通販最大手のアマゾンだろう。ミールキットの販売事業をすでに一部市場で開始しているほか、公表されている高級スーパー米ホールフーズの買収計画は、アマゾンに実店舗網を提供するものとなる。
ブルーエプロンは今年6月に新規株式公開(IPO)を実現して以降、株価の下落傾向が続いていた。そうした値動きに影響を与えていたのは、主にアマゾンのミールキット宅配事業に関するニュースだ。
だが、それでも多くのアナリストらは、現時点ではアマゾンがもたらすリスクをそれほど重視していない。前出のヘルフスタインは、「アマゾンがこの分野において今後何をするかについて、憶測を巡らせることはあまり生産的ではないと考えている」と話す。さらに、サントラストのスクアリは、「ブランドや顧客へのリーチという点で、アマゾンと戦うことは難しい」とする一方、アマゾンのこれまでの試みが全て実現したわけではない点を指摘している。