カナダの医学誌「カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル(CMAJ)」に7月中旬に掲載された論文は、過去に行われた37件の研究結果についてのメタ分析の結果をまとめたもの。調査対象者は合計40万人を超える。
研究チームが対象とした過去の研究のうち、7件はランダム化比較試験であり、被験者は指示に従い、人工甘味料の使用または不使用を6か月~数年にわたって継続した。その他は観察研究であり、被験者に人工甘味料の使用について自己申告してもらい、長期(中央値は10年)にわたって記録したものだ。
これらの結果を分析したところ、より多くの人工甘味料の摂取と体重減少の関連性を確認することはできなかった。一方、長期にわたって行われた観察研究の結果では、人工甘味料の摂取と体重増加、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、心臓疾患をはじめとするその他の健康上の問題との関連性が見られた。
臨床試験の結果から有益な結果が得られていないこと、観察研究からいくつかのマイナスの影響が確認されていることを受け、研究チームは人工甘味料の使用について、当面はより慎重な態度を取るべきだとの見解を示している。
関連性を裏付ける複数の仮説
人工甘味料と体重増加に関連性があると見られるのはなぜだろうか?この点については、多くの仮説が示されている。その一つが、ミバエとマウスを対象に行った実験結果に基づくものだ。脳による「甘味の認識」と摂取エネルギー量の関連性が人工甘味料では保たれない点がその理由とされる。つまり、甘味を認識してもエネルギーが摂取されていないため、脳は別のものからの栄養摂取を欲してしまうということだ。
もう一つの仮説は、甘味料が腸内細菌の自然なバランスを壊し、それによって食べ物の代謝が強い影響を受けるというものだ。その他には、意識・無意識にかかわらず、完全に心理的な理由が指摘されている。私たちはある方法でカロリー摂取量を制限すると、別の一つまたは複数の方法で、栄養を摂取しようとするというのだ。
さらに、私たちは逆の方向から疑問を提示している可能性があるとの指摘もある。人工甘味料が体重増加を引き起こしているのではなく、体重増加が甘味料の使用の「理由になっている」のかもしれないということだ。人工甘味料と体重の関連性には、私たちが期待する因果関係よりもさらに複雑なものが関わっているのかもしれない。
これらの関連性について、その詳細が解明されない中でも多くの研究結果は、人工甘味料が私たちの望んだような簡単に肥満の問題を解決してくれるものではないことを示している。
体重を減らすためには、あるいは増やさないようにするためには、多量の砂糖を欲しないように脳(または精神)を訓練することが、より生産的な方法なのかもしれない。私たちにとって最も賢明な飲み物は、恐らく水、コーヒー、お茶なのだと考えられるだろう。