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2017.07.29

「笑い」を広告に活かすには?

Photo by Karwai Tang/WireImage


別所:さて、「笑い」を広告に活かすには? というテーマですが、海外と日本は笑いのセンスが違うじゃないですか。その違いのなかでどうやって間や共通性をつくるのか。ドメスティックに国内のお客様にだけ向けてつくっていいのかどうか。

中尾:笑いは特に難しいですよね。特定の民族や文化のなかでしかわからないものがあって、出てきた瞬間に笑える・笑えないという違いが出てくる。

松尾:たとえば『モンティ・パイソン』の映画シリーズだと、キリスト教のことを笑うギャグがたくさんあるけれど、イギリス人がキリスト教に対してどのようなアンビバレントな思いを持っているのか理解していないと笑えない。あと、『モンティ・パイソン』にはツッコミ役がいない。困ってオタオタしている人がいるのに、誰もそこに突っ込まずに、異常な状況がそのままエスカレートし、そのまま次の場面に行く。

別所:『Mr.ビーン』もそうですよね。

松尾:そう。つまり、その世界観がパラレルワールド的につながっているということなんですよ。「ちゃんちゃん♪」と処理する機能がない。

別所:ずっこけるとかないですもんね。

中尾:僕は個人的に、日本人の笑いに対する感性は、細やかで敏感すぎると思うんです。海外のCMを日本人が見ると、だいたい何をおもしろがっているかわかりますが、僕らがめちゃくちゃおもしろがっているものを海外の人に見てもらうと、まったくわからないことが多い。それは日本人が基本的には単一言語を話す民族であり、間合いや言語化されていないものを理解する能力がすごく高いのかなと。

松尾:目配せするだけでニュアンスがわかるというのはありますね。落語の話ばかりで恐縮ですが、右を向いて話し、左を向いて話したら、ふたりの人物が話していると理解する芸能って、たぶん世界にはあまりないと思う。スタンダップコメディはあるけど、あれは「◯◯がこういったんだ」と地語りが入りますから。

中尾:外国は足し算の芸能なんです。足して足して足しまくる。日本は逆で、引き算の芸能。引くことでさっと粋に仕上げ、それをみんなが感じ取って笑ったりする。

別所:なるほど。笑いというのは、けっこう約束事があるということでしょうか。

西田:笑かすための構造がしっかりある、ということかもしれないですね。


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(左から)別所哲也(ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 代表)◎1990年、映画『クライシス2050』でハリウッドデビュー。99年より、日本発の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル」を主宰し、文化庁長官表彰受賞。

中尾孝年(電通クリエーティブディレクター)◎日本中で話題になり社会現象にもなったAKB48江口愛実や大人AKB48などを手がけたヒットメーカー。世界最高峰のカンヌを複数回受賞するなど国内外での受賞歴も豊富。

松尾貴史◎俳優、タレント、ナレーター、コラムニスト、“折り顔”作家など幅広い分野で活躍。カレー店「般°若」(ぱんにゃ)店主。街歩きエッセイ『東京くねくね』(東京新聞出版局)など著書多数。

西田二郎◎読売テレビ放送編成局編成企画部長。『11PM』『EXテレビ』を経て、93年放送開始の『ダウンタウンDX』を演出し、20年以上も続く長寿番組に育てる。15年1月、営業企画部開発部長。16年7月、現職。

構成=堀 香織 プロフィール写真=SSFF & ASIA

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