ビジネス

2017.07.28

ECが普及してもファッション領域で「実店舗」がカギを握る理由

Farfetchのジョゼ・ネヴェスCEO(Courtesy of Farfetch)


小関:私たちのサービスも、SOFも、ユーザーの購買体験をリデザインするものだと考えています。良いユーザー体験を提供するには、ユーザーの情報収集が欠かせません。9割の顧客接点が店舗にある以上、オフラインでの情報収集や活用も重要になりますね。

ネヴェス:オンラインでお客様が商品を検索し購入する時、何を見たかやどのページに滞留したかなど、大変たくさんのデータが収集されていますよね。一方で、オフラインで行われていることのデータ収集はされておらず、店舗で何を見て、試着したかは全くわからない。いわばセールスの約10%であるECだけが情報収集できている状況です。

また、どうやって企業が店頭でのデータを収集・活用していくかと同時に、お客様にとって良いサービスが実現できるか、その両輪を実現する必要があります。

例えば、インスタグラムを通してもたくさんのデータが収集されますが、インスタグラムの体験が楽しいからこそ、ユーザーはそれを意識せず、ログアウトせず楽しんでいます。カスタマーエクスペリエンスを通した信頼関係を高めていくことで、お客様はそれを許可するというわけです。

小関:先進国ではネット人口の増加が逓減しています。そんな中オフラインの商流やデータをどうWeb化するかというのがキートピックだと考えています。例えば、EC化が2020年には20%を超えると目されている中国でさえも、テンセント、バイドゥ、アリババが最も積極的に投資するのがO2O領域です。このような状況はどう捉えていますか?

ネヴェス:在庫が余ってしまい、それをセールにかけて、それでも売り残れば最後には廃棄……と長期持続が難しく、非効率が多い今のリテールには改革が必要だと考えています。

データを活かすことで持続可能なリテールになり、お客様がもっとスマートにショッピングできるようになれば良いなと思います。テクノロジー自体はすでに存在をしているので、あとは、それをどう適用していくかです。

小関:私たちは目指すところを共有していますね。目的はテクノロジー自体ではなく、テクノロジーを使ったユーザー体験の向上。家からどの店舗に自分に合うアイテムがあるか確認できたり、来店予約した店舗でスムーズに試着や決済ができたり、購入後も継続的なコミュニケーションがとれるようになったりと、Webとの連動から業界の再生が始まっていきます。

SOFは、ロンドンのBrownsとニューヨークのThom Browne旗艦店で、2017年後半に採用予定。2018年には上記2都市を中心に展開拡大し、2019年には日本も含めグローバルで展開していく構想だ。

また「未来の購買体験の提供を目指す」というSTYLERは、ユーザーが商品に関心を持ってから服の着用体験をシェアするところまで、縦にバリューチェーンを押さえるべく、今夏に直接商品を購入できる機能を実装する。海外からの強い引き合いを受け、今年中には台湾、来年には中国に進出する予定だ。

小関氏が「日本のファッションビジネスは売上維持のために新規店舗を推し進め、その結果オーバーストア状態になり、利益面が厳しくなり、定期的な大量閉店につながる」と指摘するように、店舗が重要とはいえ、ただ増やすことは解決策にはなり得ない。

新規出店に依存したビジネスモデルではなく、オンラインと連携したスムーズな”ユーザー体験”の提供が、これからのファッション業界に必要な策となりそうだ。


FARFETCHのジョゼ・ネヴェスCEO(左)とSTYLERの小関翼代表(右)

編集=市來孝人

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