ビジネス

2017.07.28

ECが普及してもファッション領域で「実店舗」がカギを握る理由

Farfetchのジョゼ・ネヴェスCEO(Courtesy of Farfetch)

アマゾン、ゾゾタウンなどにより、国内外でファッション領域におけるオンラインショッピングの普及が加速している。しかし同領域のセールスの92%は未だ実店舗での販売であり、2025年でも75%を占めると予測されることから(2016年Bain Research調べ)、実店舗は今後も重要な役割を果たしていくとみられている。

ロンドンに拠点を置き世界190カ国で展開、700以上のラグジュアリーショップやブランドと提携するオンラインプラットフォームサービスFARFETCHは、その“実店舗”での体験を重要と捉え、今年新たなプロトタイプを発表した。オンラインでの消費傾向や購買履歴などのデータを店内でも用い、よりパーソナルなショッピング体験へと導くプラットフォーム「Store of The Future(SOF)」だ。

一方日本では、STYLERが「つながりでファッションを楽しくする」をコンセプトに、アプリを通じて店舗スタッフからコーディネートのアドバイスを受けられるサービスを開発するなど、オンラインとオフラインのシームレスな連携に取り組んでいる。

ファッションとテクノロジーの融合により店舗=オフラインでのショッピングはどう変わっていくのか。STYLERの小関翼代表がFARFETCHのジョゼ・ネヴェスCEOに、その未来を聞いた。


小関翼(以下、小関):まずStore of The Future(SOF)を手がけることにしたきっかけについて教えてください。

ジョゼ・ネヴェス(以下、ネヴェス):実店舗にはオンラインにはないマジックがあります。それは実店舗の雰囲気だったり、アイテムに触れることだったり、店員とのやりとりだったりという総合的なエクスペリエンスです。

テクノロジーは音楽や映画などを変えて行く原動力になっていますが、ショッピングも同様。我々も、お客様にとって実店舗でのシームレスなショッピングを提供していきたいと考えています。

小関
:具体的には、どのようなサービスでしょうか?

ネヴェス:店舗に入り、お客様が店舗への情報開示を承認すると、顧客の携帯に蓄積された消費趣向・オンラインでの購買履歴などのデータが店内に転送されます。そのデータをもとに好みやサイズに合った接客が可能になるんですね。そして顧客が試着しようとして選んだ商品の情報はRFID(電子タグ)と超音波を利用し店内の試着室でも共有されます。


ロンドンで発表された新プラットフォームシステム「Store of The Future」のBETA版(Courtesy of Farfetch)

試着室のミラーでは、サイズ選択や在庫確認ができるほか、スタイリングにあうアイテムも提示され、新たに試着を希望する場合は、ミラーにタッチするだけで指示することもできます。

店員の接客が気に入れば店員と繋がることも可能で、店舗側も試着・購入時の履歴に応じたリコメンドや「最後の一個です」というリマインドを送ることができます。

小関:店頭でのユーザー体験にはセレンディピティがあります。一般的なECはカタログと検索をベースとしたUIなので、これを提供することは難しいです。

FARFETCHは、ユーザーの購入体験という点に力を入れているので参考にしています。今回のSOFは、オンラインとオフラインのよりシームレスな体験といえますよね。このような体験を提供する重要性について聞かせていただきたいです。

ネヴェス:お客様はショッピングする時に、オンラインかオフラインかはそこまで区別していないと思います。その区別は、我々が頭の中でアカデミックに考えてしまっていることなんですね。良い商品をオンラインで見てオフラインで買うこともあるかもしれないですし、オフラインでは購入まで至らなかったアイテムをオンラインで購入することもあるかもしれません。両者は相互に補完し合う形で存在するものだと思っています。
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編集=市來孝人

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