エーオンは各国の政治的リスクに関する情報をまとめたニュースレターの中で、インドは「(アジア)地域の経済にとって明るい材料といえる」として、次のように評価している。
「本当に必要とされる改革の実行に向けて政府が行動しており、今年度予算ではインフラ整備に重点を置いている。政治的暴力は依然としてなくならないが、経済成長がその影響を相殺している。2016年11月に実施した高額紙幣の廃止の影響も弱まりつつあるようだ。景気は回復傾向にある」
「与党のインド人民党(BJP)は地方選挙でも支持を伸ばしており、国会での立場を強めている。議席数は過半に満たないものの、政府は重要な改革を推進することができるはずだ。投資家たちに(インドに対する)一定の信頼感をもたらすことになるだろう」
また、インドでは外資規制の緩和や関税の引き下げなども行われている。
中国の状況
一方、エーオンは中国の今後について、それほど楽観視していないもようだ。「中国の緊縮政策は国内外において、成長の足かせとなるだろう」と指摘している。
「政府は国内において相変わらず権力基盤の強化に腐心している。この傾向は2017年を通して続いていくだろう」
「建設事業(の推進)など短期的な成長戦略を重視してきたことで、中国は信用取引への依存度を高めてきた。結果として政府は、金融政策の引き締めに向かい始めている。こうした戦略は債務返済コストを増やし、政治的な不満を高めることにつながる。2017年の中国経済は、さらに不安定性を増す可能性がある」という。
今後の成長見通し
世界銀行の最新の「世界経済見通し」によれば、インド経済は今年、世界4位のペースで成長を遂げる見込みだ。経済成長率は、中国の6.9%を上回る7.2%となる見通し。
また、経済情報サイトのトレーディングエコノミクス(Tradingeconomics.com)によれば、1951~17年のインドのGDP成長率は平均6.12%。2010年第1四半期には過去最高の11.40%に達した。
さらに、経済規模の拡大に伴いインドは競争力も強めている。世界経済フォーラムが発表した世界競争力レポートの2016~17年版では、インドの競争力は最高点を7としたスコアで4.52ポイントを獲得。同国の過去10年間の平均である4.33ポイントをわずかながら上回った。競争力では、同レポートの評価対象138か国・地域中、39位にランクを上げた。また、競争力の強化は経常赤字の縮小にもつながっており、2016年度は対GDP比0.70%に低下している。
金融市場は両国のこうした変化に注目している。上場投資信託(ETF)のiシェアーズS&Pインディアは過去3年の平均上昇率が5.52%となり、iシェアーズ中国大型株ETFの同4.79%を上回った。
ただし、こうした中でも大手格付け各社の評価はいまだ、中国がインドを上回っている。例えばフィッチ・レーティングスは、中国の格付けを「A+」とする一方、インドは「BBB‐」で据え置いている。