中国政府「子供のゲーム規制」徹底へ 顔認証システムの導入も

Hatchapong Palurtchaivong / shutterstock.com

中国のテンセントは「未成年者のゲーム依存を助長している」として政府に名指しで批判されている。国営メディアの人民日報はテンセントの大人気ゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」を取り上げ、「有害」であり常に「負のエネルギー」をまき散らしているとした。

テンセントは速やかに対応し、12歳以下は1日1時間プレイすると自動的にログオフさせる措置などを導入した。だが中国政府は280億ドル(約3兆円)規模の世界最大のゲーム産業の規制を強化する方針で、テンセントのみならずすべての参入企業がその影響を受けると見られる。

人民日報と新華社通信は共にゲーム開発者に対し、ゲーム依存対策の改善を要求した。新華社通信はテンセントのゲームについて「歴史上の人物に仮想の能力を与えることで中国の歴史をゆがめている」と指摘。また依存対策のメカニズムにも抜け道があり、当局は取り締まりを強化すべきだとした。

「王者栄耀が巻き起こしている社会現象は、急成長し規制の追いついていないゲーム産業の欠点を浮き彫りにしている。関連当局は同産業の成長を促すだけでなく、秩序が保たれるよう規制も強化すべきだ」と同社は述べた。

子供の「ゲーム依存」は重大な問題

中国政府にとって「王者栄耀」のようなゲームは早急に解決すべき社会問題だ。小学生がプレイしたいがために親の金を盗み取るという問題も報道された。「王者栄耀」は、ダウンロードは無料だがアイテムの購入は有料で、世界最高の売上を誇るモバイルゲームとなり、2015年に発表されて以来2億人がプレイした。

「王者栄耀」はHSBCのアナリストの試算によると、2017年第1四半期だけでもテンセントのモバイルゲーム関連の売上の40%を占めている。

特に政府の目に留まったのが、杭州市の13歳の少年が父親に「王者栄耀」をやめさせられそうになり、飛び降りて両足を骨折したという人民日報による報道だ。父親によると、少年は「登場人物のように空を飛べると思った」という。

こういった報道は、当局のオンラインゲームに対する印象を悪くしている。中国では2008年、世界で初めてゲーム依存を「臨床的障害」と位置づけた。治療を受けさせるために軍隊型のブートキャンプに子供を入れる親もいたという。2010年には中国文化部が同国初の依存対策法を導入。翌年に政府が全企業に対しプレーヤーの登録に実名を使用させるよう指導した。

「中国でのオンラインゲームに対する規制は今後一層強化される」と、中国政法大学の伝播法研究中心(Communications Law Research Center)で副主任を務める朱巍(Zhu Wei)は言う。「政府は王者栄耀を批判することにより、すべてのゲーム企業に社会的影響のコストを負担させようと考えている」
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編集=上田裕資

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