パフォーマンスの高い社員を昇進させるのは間違い?

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ポテンシャルの高い人材は、さらに大きな責任を担うことが可能です。その人材を早く見つけるためには、多くのチャンスを提供すること。つまり、どんどん難しい仕事をやらせてみるのです。例えばプロダクトマネージャーなら、既存の担当プロダクトに加えて別のものを担当させてみる。困難な状況をつくることで、前述した“ポテンシャルの幅”があるかを見極め、一定の条件をパスしたら正式に昇進させ、新たな職務を与えるのです。

増えすぎた職務は思い切って部下に任せ、部下がどこまでやれるか試してみましょう。難局をうまく乗り切り、それまで見せなかったポテンシャルを発揮できる「低パフォーマンス社員」がいかに多いか、驚くでしょう。

このような社員が見つかったら、それからはマネージャーの責任です。より高い基準を新たに設定し、それを常にクリアしていけるようその社員の長所を伸ばし、個別指導やトレーニングで足りないところを補います。すると、すぐに目標をもう一段引き上げられるようになるでしょう。

実績ではなく将来性を見込んで昇進させることはリスクが高い、属人的判断による希望的観測で社員を昇進させているのでは、と心配になるかもしれません。または、非常に優れたパフォーマンスを出していた社員が、自分よりパフォーマンスの悪い人が昇進することで気分を害することを恐れるかもしれません。

こうした懸念は当然です。これまでは誰もが、報酬はパフォーマンスに対して与えられるものだと思っていたのです。しかし、昇進方法を変えることはそもそも、一部の社員の反発を招くような難しい判断なのです。このような判断でこそ、マネージャーとしての勇気が試されます。こうした重大な決断について積極的に会話を重ね、チームの結束を保つようにしなければなりません。

これらの作業は面倒で、むしろ誰も昇進させない方が簡単に思うかもしれませんが、それは避けなければなりません。ポテンシャルを秘めた将来有望な社員は、昇進の機会を得られなければ会社を辞めていくものです。

組織を作るのは人であり、特にリーダーは組織の性質を大きく左右します。有効なリーダーシップを発揮するマネージャーとは、ポテンシャルの高い社員にしっかりとその能力を発揮させ、そんな社員に常に成果を上げられるような基盤を築くことのできる上司です。すでに実績を上げている部下に報酬を与えるだけでは十分ではないのです。


アダム・ミラー(Adam Miller)◎Cornerstone OnDemand社長兼CEO。1999年、「人は自分の可能性に気づくべき」という思いからアパートで、クラウドコンピューティングのタレントマネジメント会社コーナーストーンを設立。現在191か国43言語で、3000社、3100万以上のユーザーに使用する。活発な社会起業家として、「人を助ける人を助ける」をコンセプトに教育や労働力開発、災害救助などに注力している。ペンシルバニア大学BA、その大学院Wharton BS、UCLAロースクール JD、UCLAアンダーソンビジネススクール MBAを保持。またCPA(会計士資格)とシリーズ7(米国証券外務員資格)も保持する。ロサンゼルスに、妻と3人の子供と住む。

文=アダム・ミラー

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